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天才美人トールペインター夏川みなみ。僕の御主人様だ。
丁寧にヤスリをかけ滑らかになった木の上に木ヤニ防止の薬、シーラーが塗られる。僕はその上をみなみちゃんの魔法の手によって踊らされる筆だ。
いよいよ出番だ。太平筆の僕の毛の半分に「デザートターコイズ」の青色と、もう半分に「ダンジェリン」のオレンジ、そして少量の水を含ませ、ペーパーパレットの上でその2色が僕の毛の中でグラデーションになる。
そして僕は舞台となる木の上を下からへと左右に行き来し滑って行く。
みなみちゃんの力加減と絶妙なスナップで夏川みなみの真骨頂。ひと筆で木の舞台が夕方の海と空のグラデーションに出来上がる。
だがその時、僕は床の上に落とされた……。
えっ?
みなみちゃん?
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