文の花

1/9
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「文豪を呼べ」と全能の神ゼウスが仰せられた。たちまちのうちに死して天上に召された文豪たちが集まった。ゼウスは次のように仰せられた。 「今、人間界の言葉は乱れている。自らのおごりのせいで乱れている。その昔、人間たちが天にも届けとバベルの塔を建てた時、余は人間たちの言葉をバラバラにして、何を言っているのか分からないようにした。その後、人間は文字を発明し、それぞれの言語から文化が生まれ、文学をはぐくみ、そなたら文豪を生んだ。文字には人を平和にする力がある。そこで、そなたたちの生まれ変わりに『本を書け』と命ぜよ。一刻も早く文字による平和が訪れなければならない。さもないと、まず粗野な発言をする者は声を出せなくなる。次に文字を書けなくなり、文字を読めなくなり、眼が見えなくなってしまう。だが聴力だけは残しておいてやろう。聞こえてくる言葉で余生を心静かに過ごさせ、来世に期待しよう。そうならないように、そなたたちの生まれ変わりと力を合わせ、何とかせよ。なお語り部には別途指示するので、語り部の子孫たちとも力を合わせるがいい。」  これを受けて、文豪たちは、それぞれの生まれ変わりに手紙を送った。もしかしたら、あなたにも手紙が届くかもしれない。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!