第一章 取材と怪談

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 水無月隆造氏との約束は午後一時半だった。今の時刻は午後一時二十分。隆造氏の住まいは洋館の方だと伺っていた。  空を見上げると今にも降ってきそうなぐずつき具合だった。  深見は洋館の方へと足早に向かった。霧島もそれに続く。  玄関の前まで行くと呼び鈴を鳴らした。しばらくして玄関ドアが開く。出迎えたのは若い男性だった。今どき珍しい燕尾服で礼儀正しくお辞儀をする彼に二人はたじろぐ。まさか現代でこれぞ執事という人間に出会うとは。  使用人と思しき青年は若く、まだあどけなさが残っていた。歳は二十歳前半ではないだろうか。すらっとした長身で爽やかな風貌だが、表情の乏しさが近寄りがたい雰囲気をかもし出していた。 「深見信一様ですね?」 「は、はい、そうです」 「ようこそいらっしゃいました。私、使用人の槙恵吾(まきけいご)と申します。旦那様もお持ちです。どうぞお上がりください」  槙に招かれ屋敷内へと足を踏み入れる。広い玄関が二人を出迎える。  玄関は洋館の真ん中に位置しており、そこから左右に広がっている。目の前には二階へと上がる階段が続いている。  洋館といえどもここは日本式を採っているのか、玄関で靴を脱いでスリッパに履き替える。そこから槙に部屋へと案内される。場所は二階のようで階段へと進んでいく。
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