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「いやいや古いだけだよ。維持も大変で、最近やっと蔵の中を掃除したんだ。ほとんどガラクタばかりでね、まいったよ」
「意外ですね。蔵というと、お宝がたくさん出てきそうなイメージなんですが」
「そんなのはごく一部だよ。蔵はもちろん、プライベートな場所以外なら好きなだけ撮ってくれて構わないから」
「ありがとうございます」
快諾する隆造。それに乗っかる形で深見もお願いを口にする。
「あの、水無月さんのお母様、キヌさんにもお話を伺いたいのですが。御当主の話に加えて水無月家の歴史についても載せようと思っていまして。そういうお話はおばあさまの方が御存知ですよね?」
「そうだね。母の方が長く生きてるからね」と冗談交じりに言う隆造「そういうことなら話を通しておこう」そう言って立ち上がると彼はデスクの上の電話を取った。内線電話なのだろう。二三言交わして受話器を置く。
「構わないそうだよ」
「ありがとうございます」
「いいえ。良い記事にしてくださいよ」
「もちろんです」
「槙を呼びます。案内させましょう」
「あ、大丈夫です、迷うわけでもありませんから。そんなことでお手を煩わすのも申し訳ないですし」
「そうかい? じゃあ、母は日本家屋の方にいるので」
「わかりました。本日はありがとうございました。またお母様から話を伺った後、改めてご挨拶に伺いますので」
「ええ」
こうして二人は当主の書斎を後にした。
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