第一章 取材と怪談

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 目的地まではまだ距離があった。街道を抜けて山へと向かい、そこを少し登った所にある。距離としてはやっと半分と言ったところか。デスクワークが多い仕事、運動不足が足にくる。しかしそれは彼だけではなかった。  深見は後ろを振り返った。 「遅いなあ、置いてくぞ~」 「ふざけるな、君は鬼なのか? せっかくの休日なのに、君が頭を下げてまで頼むからわざわざ来てやったんだ。それを置いていくとは何事だ」 「でもなぁ、遅いにも限度があるって」 「こ、この靴が悪いんだ。それにスーツだって滅多に着ないんだ、それなのに仕舞ってあったのをわざわざ引っ張り出してだなあ」 「はいはい、わかった、わかった。俺が悪かったよ。今日はありがとうな、(てる)」 「そんな心のこもってない上っ面だけの感謝なんかいらない。感謝しているならバイト代で誠意を見せてくれ」 「教師って副業ダメなんじゃないのか?」 「今回の手伝いはボランティアだ。そして君から小遣いをせびればいい。そうすれば決して副業ではない」  ぜいぜいと肩で息をしながらついて来るのは深見の中学からの同級生霧島照(きりしまてる)。  霧島は地元の高校で生物教師をしている。深見とは腐れ縁のごとく付き合いが続いており、今日は本来彼と一緒に来るはずだった新人が体調不良で急遽来られなくなり、代わりに呼び出したという訳である。
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