46人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ隠すほどでもないだろうからなあ。婿候補といっても俺ともう一人しかいないよ。もう一人は水無月グループの中でも若くて優秀な社員のやつだよ。名前は高瀬祐二。働き手として優秀なうえ、家柄も良いから選ばれたんじゃないかな」
「家柄?」
「医者の家系みたいだな。父親と兄は医者、弟は会社員らしいが、自分も含めてみんな難関大学卒のエリートだよ」
「やっぱり水無月家の婿となると、何かしら優秀じゃないとダメなんですね」
残念そうに肩をすくめる深見に豊田は複雑そうな表情を浮かべる。
「玉の輿狙いかい、記者さん。でも婿入りしたらしたで大変そうだぞ」
「でしょうね。学の無い私でもそれは分かります。豊田さんはそれを承知で?」
「まあねえ。だけど良い話だと思わないか? 婿になれば自ずと水無月グループ社長の座がついて来るんだぜ。でも、そうは言ってもなかなか難しそうだよ」
「というと?」
「水無月家のお嬢さん、綾子ちゃんだよ。箱入り娘だったのか、男への免疫が無いんだろうなあ。なかなかガードが固くて困ってるよ。女性の扱いには自信がある方なのにさ」
「高瀬さんも?」
「彼は俺と違って真面目な好青年。俺よりも苦戦しているよ。俺だって話が続かないし、番犬のような綾子ちゃんの友人もいる。ほんとマジで大変だから。経営より難しい気がするよ」
「それはそれは」と深見は同情するような顔になる。
最初のコメントを投稿しよう!