第一章 取材と怪談

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 玄関を出ると外は雨模様だった。とうとう降り出してしまった。今はまだぽつぽつと地面に染みを作るぐらいだが、空は見るごとにその黒さは増しているので、激しくなるのは間違いないだろう。 「やっぱり降り出したかあ。それはそうと照、お前ここに来てからずいぶんおとなしいじゃないか」 「今日は君の助手だろ。だから助手らしくおとなしくしているだけだ。一歩下がってついて行く奥方のごとく、君を立てているんだ」 「そりゃありがたいが、なんだか気持ち悪いなあ」 「粗相するなと言ったり、静か過ぎると気持ち悪いと言ったり、君は僕にどうしてほしいんだ」 「そう言われるとどう答えたものか」 「はぁ?」 「あの……」  二人が玄関先で言い合っていると後ろから声がかかる。振り返ると槙が傘を手に立っていた。 「敷地内といえども雨に濡れますので、どうぞお使い下さい」と傘をそれぞれに渡す。 「お気遣いありがとうございます」と深見はすぐに仕事モードに切り替える。しかし内心では恥ずかしさでいっぱいであった。霧島といるとどうも学生時代に逆戻りしてしまう。中高生のときのノリで話してしまい、大人になれよと思うのだが、それがまた心地よいのでどうしようもなかった。だが昔からの友人と一緒にいるとそうなるのは、どの世代も同じだろう。  一方槙はプロの使用人だった。何事もなかったようなふるまいに加え、慇懃な態度で二人を送り出す。 「向こうでは家政婦の藤谷が出迎えますので」 「は、はい。分かりました」
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