第一章 取材と怪談

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 借りた傘を開いて、二人は日本家屋へと向かった。洋館の玄関から歩くこと数秒、距離にすれば十メートル弱か。  日本家屋の玄関前、こちらでも呼び鈴を鳴らす。するとパタパタと足音が聞こえ五十代ぐらいの女性が顔を覗かせた。 「ああ、深見さんですね。私は家政婦の藤谷美千代と言います。話は聞いてますので、どうぞ中に」  美千代に案内されるまま二人は中へと入る。  室内はよくある古い日本の家、おばあちゃんの家のイメージそのままだった。だがそれは玄関までのこと、一歩足を踏み入れればそんなイメージも吹き飛んでしまった。  大きく違うのはその広さや造りだろう。一部屋一部屋が大きく、また床や柱など艶やかで良い木材を使っているのが分かる。掃除が行き届いていることもあるかもしれないが、古いと聞いていたわりにしっかりしてるのは建物自体が素晴らしいからだろう。欄間も凝った造りの物が多く、香っているのはお香だろうか。まるで武家屋敷に来たような気分になり、深見はピリッとした緊張感に包まれる。  通されたのは客間だった。上座にお年寄りの女性がちょこんと座っている。人が入って来ても微動だにしない彼女に一瞬置き物か何かかと思ってしまう。二人は家政婦がひいた座布団の上に正座する。
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