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深見は霧島を一瞥する。見ると口角が上がっていた。この状況で笑えるとは尊敬と呆れが入り混じるが、誰であろうと我が道を通し物怖じしない霧島の性格に、現状救われているのも確かだった。きっと深見一人だった場合、これ以上聞くことも出来ず、何度も頭を下げて脱兎のごとく部屋を後にしていただろう。
霧島は微笑を浮かべたまま老婆と差し向かっていた。キヌもそれを何の感情も無くまっすぐに受け止めている。
「夜遊びだけではないようですね」
「……水無月家の嫁として失格だっただけ」
「失格?」
「体が弱く、家の仕事もそれほど出来なかった。見た目だけが取り柄のような女だったよ」
「それは、手厳しいですね」
「それに……」
「それに?」
キヌの顔が嫌悪感に歪む。本当に雪子の話をするのが心底嫌なのだろう。吐き出されていく言葉にも負の感情が込められているからか、聞いている方もどんよりと精神が侵食されていく感じがした。
「あの女は男子を産めなかった。欠陥品だった」
「それ、本気で言っていますか?」
「当たり前だろう。女は子を産み家を守るのが仕事だ」
「後継ぎを産めなかったから嫁として失格、女性として欠陥品ですか。なるほど。歴史ある一族らしい考え方ですね。私は前時代的過ぎて理解しかねますが」
霧島の嫌みを含んだ言葉にキヌの眉がピクリと動く。
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