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坂道は緩やかに続いていたが、途中で曲がり先が見えなかった。二人は足腰の疲労を感じながらも歩を進めていく。
「それでもう一つの怪談は?」
「水無月家の怪談その二、消える女たちの怪」
「消える?」
「そう。水無月家で働いていた女たちが次々に消えているんだとさ。それに関しては調査不足で何と言えない。時間も人手もなかったからな。ただこれは、そんな昔の話じゃないんだ」
「どれくらいだ?」
「十年前ぐらい?」
「最近じゃないか。すぐに辞めているとかじゃないのか」
「その可能性ももちろんある、と言うかその可能性が高いだろうな。ただ、女の叫び声もたびたび聞こえていたらしいぞ~」
そう言って手を下に向け幽霊ポーズで脅かしに掛かる深見を霧島は一笑する。
「そうやって何でもかんでもオカルトにするな。川が近くにあったからアオサギの声とかじゃないのか?」
「確かにアオサギは江戸時代の頃妖怪として扱われていたな。そういう物語も多くあったし、夜にするあの鳴き声、人の叫び声にも聞こえなくはないな。俺も寝ているとき、突然聞こえてきてビビったことがある」
「だろ。その声が女の叫び声に聞こえた。ほら、解決だな」
「いやいや、でも普通間違えるか?」
「夢でも見てたんじゃないのか。怪談や心霊現象、その多くは勘違いや思い込みから生まれている」
「それだとつまんないじゃないか」
「現実とはそういうものだ」
「出たよ、リアリスト霧島」
「やめろ、それ。なんだか売れない芸人みたいじゃないか」
そう言って顔をしかめる霧島、その横では深見がすねるように口を尖らせる。
「ああぁ~昔からオカルトとかそういうの信じないよなぁ、お前」
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