第一章 取材と怪談

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 深見は足を止めた。急に止まった彼を霧島が不思議そうに見つめる。 「俺さあ、水無月家とは少なからず関わりがあるんだ。本当のこと言うと、地元社長のコーナーは別のやつが担当なんだけど、今回だけ特別に代わってもらったんだよ」 「なんでまた」  深見の顔に影が差す。つらそうに唇を噛む彼だったが、ゆっくりと口を開いた。 「昔、姉さんが水無月家で家庭教師のアルバイトをしていたんだ」 「そういう事か」 「そういう事だよ」 「なんだ、真面目な理由もあるんじゃないか」  ようやく足を動かし始めた深見の後を霧島が追う。その少し悲しげな背中に霧島が言葉を投げかける。 「お姉さんのの原因が、水無月家にあると思っているのか?」  その言葉に深見の肩がビクッと動く。 「それは分からない。バイトしていた時期と姉さんがふさぎ込むようになった時期が一致しているだけだ。ただそれだけで何の根拠もない。それに彼女が自殺したのは俺が十三のときで、もう十三年も前のことだし、今さら真相を探るにしても時が経ち過ぎてる」 「それでも、その低い可能性に賭けているんだろ?」 「姉さんの自殺の原因は今も分からず仕舞いだ。俺は姉さんが何で死んだのか真相が知りたい。昔からずっと言ってることだけどな。もしかしたら今回の訪問で何か手掛かりを得られるかもしれない。お前の言う通り、可能性としては低いだろうけど、賭けてるんだろうな」 「はぁ……そんなこと聞かされたら、僕も真面目に協力しないといけないじゃないか。僕は信一のお姉さんを知らない。出会った時にはもう亡くなっていたからな。それでも、君の話からどんなに素敵な人だったかは聞かされている」 「事あるごとに話していたからなあ」 「君は十分シスコンだよ」 「否定はしないさ。身内のひいき目と言われるかもしれないけど、本当に素敵な人だったんだよ」
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