黒田

2/20
190人が本棚に入れています
本棚に追加
/100ページ
 お昼休み、休憩室の隅でお弁当を食べていると、後輩たちが恋話で盛り上がっていた。  恋話には特に興味はないが、その中で「三ノ宮さん」と出て来てしまったので、自ずと会話が耳に入って来てしまった。  いや、聞きたくて聞いたわけではない。  盛り上がって大きな声で話すから聞こえてしまったわけで……。 「三ノ宮さん、彼女と別れたらしいよ」  どこの情報だ、と思うが、後輩の中に情報通の子がいた。本当にどこから話しを拾ってくるのだろうか不思議でたまらない。 「でも三ノ宮さんていつも長続きしないんでしょ?」  ああそれは聞いたことある。  長くても半年とか。短いとひと月とか。 「飽きやすいってこと?」 「本気にならないってことでしょ」 「遊び?」 「かる〜い!」  三ノ宮さんはそんな人じゃないよ!  付き合ったことないから、……知らないけどさ……。 「ちょっと誰か三ノ宮さんと付き合ってみてよ。そしたら真相分かるじゃん」 「その発言もサイテーだけどね〜。でも興味はある〜」  やめて、三ノ宮さんを弄ぶようなこと!  そんなことするくらいなら私が付き合ってみたいよ!! 「おためしで?」 「いいじゃん、ひと月くらい!」 「思い出くらい出来るかも?」  ――おためし、ひと月、思い出。  全部自分に言われてるような気がしてきた。  1ヶ月半後にはもう会うこともない人と、最後に思い出が出来るなら……。  この気持ちを伝えてもいいのかもしれない。  
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!