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「うん」
「俺はそんな慎文に愛しされてて幸せだよ。ゆっくりでいいから一緒に考えていこうぜ」
優しく微笑んでくれる和幸の優しさが慎文の不安な心を払拭してくれる。
和幸に慰められていると、自分がちゃんと認められているようで落ち着く。何があろうとも和幸のことを一生大事にしていきたいと思えた。唯一の愛している人だから……。
「とりあえず家に帰るか?」
和幸は徐に立ち上がると慎文に問い掛けてきた。
公園の時計で時刻を見ると夜の八時過ぎ。家に帰る頃には深夜になるだろう。行きだって長距離運転で疲れている筈の和幸に更に運転させるわけにはいかない。
「ううん。和幸、疲れてるでしょ……。近くにホテル探して泊まろ」
首を左右に振って、和幸の提案に乗らずにいると「いや、違う」と返されてしまう。
出先のホテルでは休まらないのだろうか。和幸の考えていることがよめない。
「俺の実家に帰ればいいし、今日はそこで休めばいい」
「えっ……。でも……。和幸のお母さんにまだ俺から話してないよ……」
「だからだよ。一緒に俺の親にも話にいくぞ」
慎文の親を通じて和幸の親にも二人の関係が知れ渡っているのは明確だ。話すのは自分の親だけではないことは分かっていても精神的なダメージが大きく、今日の慎文は完全に弱気になっていた。
和幸の親だって悲観的な考えをしているだろう。反対されるに違いない。なのに、和幸は平然と彼の家で休めばいいと言ってきたので慎文は困惑していた。
「お前の家と違って俺の家は放任主義だから心配するな。慎文に強く当たってくる奴は、いねーから」
本人に言われたところで半信半疑だった。
きっと和幸が粗方説明はしてくれているだろうが、実母のように血相を変えて追い出されてしまったらショックを受けない訳がない。
ましてや和幸の母親は明るくて、優しい人。そんな人が豹変したように、冷たい態度を取られてしまったらと思うと心臓が潰されたように痛くなる。
家の方へと先を行く和幸を暫く眺めていると公園の出口に出たところで「ほら、帰るぞ」と和幸に手招きされた。慎文は一抹の不安を抱えながらも、彼の元へと駆け寄る。
家路に近づくたびに緊張する心に押し潰されそうになっていた。
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