chapter⑫

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「慎文、んっ……」   触れるだけじゃ衝動は抑えられず、体を浮かして上体を起こすと、固く閉ざしていた和幸の唇を割って舌先を潜り込ませる。  お互いの唾液とリップ音を交わらせながらキスをしているうちに、下半身に疼きを感じては彼の腿に当たる感触がした。 このまま続けてしまいたいなんて考えては夢中でキスを交わしていると、それに気づいた和幸に肩を掴まれ、体を離されてしまった。 「これ以上したら俺の部屋とはいえ、下に親がいるからダメだ……」 「大丈夫だよ。多分聞こえないと思うし」 「その根拠はどっから出てくる」  続行させようと身体を近づけようとするがそれと同等の力で和幸に押し離されてしまう。 「和幸だってその気じゃないの?俺、和幸がむっつりエロいこと知ってるよ」 「は?何だよ急に」  素直に受け入れてくれない和幸が焦れったくて態と彼が恥ずかしがることを口走る。 「俺さ、和幸が一人でシてるところ見たことあるんだよ?」 「いつ」  怒気の込められた問いかけ。先程まで冷静だった彼が動揺していることが声音で分かる。小学生の時に見た和幸の自慰を見てドキドキした気持ちを忘れるわけがない。 「和幸が中学生くらいのときかな?雑誌見ながらズボンの中に手入れて気持ちよさそうにしているの、見たことあるんだよ?当時はよく分かっていなかったけど、あれってオ……」 「それ以上言ったら布団から追い出すぞ」  言い終わらないうちに和幸に口元を押さえつけられて口篭もる。あの時だけではなく昨日だって和幸は嬉しそうにしていたのに……。 「昨日だって、積極的にしてくれてたじゃん」  冷たい和幸にムッとした慎文は布越しから彼の丸みのある臀部を撫でて、奥の窄みのある部分を指でなぞる。 すると、和幸から甘い声が漏れて慌てて口元を抑えていた。  その反応が可愛くてもう一度、奥に指を入れようとしたら、彼の手に阻止されてしまう。 「やめろっ……。昨日はそのときの雰囲気もあるだろ」 「和幸のケチ……。あんなに俺のこと好きって言ってくれてたのに……」 「ケチってなぁ……。こういうのは時と場合ってのがあるだろ。今ここでシてるところを親に見られて撤回されても嫌だろ」 「またそうやって和幸は酷いこと言う……」  実家で致すのは両親が一階で就寝しているとはいえ、リスクがあるのは分かっているが、こうも直接的に言い放たれるのは刺さるものがある。 和幸に背を向けて丸めては拗ねていると後頭部を撫でられた。 「酷いも何も、帰ったら沢山触らせてやるから我慢して今日は寝ろ。いいな?」  また上手く宥められた感が否めないが、和幸の言うことも一理あるので背に腹はかえられない。慎文は大人しく頷くと、和幸の方へと向き直り、胸に抱き着く。 「ちゃんと俺の親も、和幸と一緒になること認めてくれる日くるかな……」 「くるだろ。来るまで一緒に乗り越えようぜ」 「うん……」  和幸の心臓の音を聞きながら眠りにつく。 この先の不安はあるが和幸と一緒に居られる喜びは大きい。時間がかかるかもしれないけど、和幸とならこの苦境も乗り越えられる気がした。
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