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「やすふみっ⁉」
無言で後ろから寝巻を捲られては、背中に唇を落とされる感触がした。
「おい、慎文。やめろっ」
上体を起こそうとしても身体を強く押さえつけられて身動きが取れない。
背中吸われている感触に恐怖を覚えながら必死に抵抗を続けていると、身体を抱き寄せられるように横に向けられ、奴の手が寝巻の中へと侵入してきた。
「ひっ……」
「カズくんが望むようにしてあげるって言ってたから……俺、触りたい。カズくんに触らせて……」
耳元で慎文の甘く強請るような声と息がかかる。
「それはっ……。だからって触っていいとは言ってなっ……」
侵入してくる手を引き剥がそうとしても、腹部を撫でられ、胸の突起を弄られる。その間にも慎文の肩口へのキスは止まらない。
次第に奴の手が下半身へと下がってくると和幸の中心部を掌で形どるように撫でては下着越しから扱き始めた。
「やだっ……」
慎文に少しは心を許してはいたが、そこまでは許していない。
なのに、暫くご無沙汰だったのも相まってか、僅かな刺激でも気持ちと裏腹に自分のモノは反応を示してしまっていた。
「勃ってきた·····カズくん、俺の手、気持ちいい?」
「やめろって……。ひゃ……」
寝巻のズボンと一緒に下着を脱がされて、直に触られる。
下半身の刺激に甘い声を漏らしそうになりながらも、僅かに保っていた理性で腰を捻って抵抗するが、直ぐに腰を引き寄せられてしまう。
不快なはずの慎文の息が和幸の過敏になった耳元にかかり、煽ってくる。
触れられるたびに熱を帯びて完全な状態になる様は情けないのに、本能に逆らえない。
焦らすようにゆっくりと適度な加減で扱かれるのが堪えられない。
早くイかせてほしい……。
達することのできないじれったさに、腰を動かすと慎文が空笑いをした。
「カズくん、気持ちいいんだっ。可愛いなー」
和幸が自ら腰を動かしたことで味を占めたのか慎文の手がより一層激しく扱いてくる。
「うっ·····ぁん。んっ·····んっ·····や·····だっ」
「カズくん、カズくん」
「いやっ·····あん·····やっ·····ああああっ」
慎文の手の中で弾けた体液が奴の手にまとわりついている。
慎文はそれを躊躇いもなく舌で拭いとると、臀部に硬いモノを押し当ててきた。
後ろから耳の裏を舐められて、臀部の割れ目に挟もうとしてくる。
十年前に奴に無理やりされたことを思い出しては全身が強張る。
「慎文、嫌だ……」
「カズくん、カズくん……」
「やめろって、怖いっ」
恐怖のあまり背後の慎文に肘打ちをすると体温が離れていく気配を感じた。
大人しく離れてくれたことに安堵して、奴の様子が気になり、ゆっくり体を仰向けに捻ると真上に影が見えて、慎文が足元に跨ってきたことにギョっとする。
慌てて上体を起こすと、表情がはっきりと見えない中でも慎文の表情がどこか寂しそうにしている気がした。右手を握られたかと思えば、頬に擦り付けてくる。
「今度は……。今度は痛くしないし、優しくするからっ。今だけっ……。
今だけカズくんがほしい……」
切羽の詰まったような慎文の声。
今日一日の奴はきっと、和幸とデートができるだけで期待に胸を躍らせていたのだろ。
そんなところにいきなり諦めろと言われても心の整理がつかないのは無理もなかった。
何十年も慎文なりに悩んででも断ち切れなかった想い。今日だけなら許してやってもいい気がした。
そうすることで奴の気持ちの整理がつくのであれば……。
「分かった。その代わり、俺のことは諦めろよ」
「……うん」
寝かせるように背中に手を当てられながら押し倒されたのちに、背面を向かされた。
両腕を布団に付けて四つん這いになると股の間に慎文の露わになった完全体になったモノが和幸の腿に挟まれる。
生々しい体温に一瞬だけ鳥肌が立ったが、「カズくん、すきっ」と苦しそうに名前を呼ばれて擦られているうちに情けが生まれてくる。
窄まりを避けるのは慎文の気遣いなのか、一生懸命に快感を求める姿が和幸の胸を痛ませた。
慎文が「うっ」と低く唸ると腿から奴のモノが引き抜かれて臀部に生暖かい感触がする。ティッシュでお尻を拭われながら背後からすすり泣く声が聴こえてきた。
「ごめんな、慎文」
静かな部屋に慎文の堪えるような泣き声と和幸の声が響き渡った。
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