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「そういえば。先週、慎文がそっちに来ただろ?」
「ああ、はい。物産展ですよね。俺も行きました。繁盛していたみたいですよ」
「だな、話は聞いたよ。ホント、慎文は俺と違って人懐っこいから客商売向きで助かっているよ」
確かに物産展の時は俺の前では頼りなさげにしていたが、接客中は得意の愛嬌でしっかりマダムの心を掴んでいた。
康孝も人が良さそうではあるが、彼の言う通り昔から慎文は近所のおばちゃんに「かわいい」ともてはやされてお菓子を貰っていたので、人に好かれる要素があるのだろう。
「でも……。慎文は他人や俺以上に和幸の方が懐いているところあるよな」
「はぁ……」
その懐いていた慎文も今となっては、避けられつつあるが……。
「まぁ、でもアイツが幼い時にあまり遊んでやれなかったから仕方ないんだけどさ」
「でも、康孝さんなら少しは甘えてくることもあるんじゃないですか?アイツがうちに来ると割とそういうところが見えるというか……」
浮かんでくるのは慎文のモノ欲しそうに強請ってくる瞳。
きっと一年に一度しか会わない和幸に向けてくるくらいなのだから、甘え慣れているのだろうと思っていた。
「そんなことないだろ。あいつも立派な大人っていうのもあるだろうけど、うちでの慎文はしっかりしてるし、俺のことなんてお兄ちゃんどころか兄さんだぞ。兄としてはもっと甘えてほしいくらいだよ」
「えっ……」
恋愛感情は別として、慎文はてっきり家族にも末っ子特有の甘えたな部分を出しているのだと思っていただけに驚愕した。
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