chapter⑧

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暫く泣いた後、慎文は何度も触れるだけのキスをしてきた。 和幸の様子を伺いながら唇に軽く触れては離れての繰り返しをする。  そんな慎文の姿が子犬みたいに愛おしくて何度も優しく頭を撫でてやった。 和幸が触れたことで心を赦し始めたのか、唇を触れ合わせる時間が次第に長くなっていく。  気づけば唇を噛ませ合うようなキスにまで発展すると、徐々に肩を抱かれてベッドの方へ誘導されていることに気づいた。  膝裏がベッドの縁に当たると、反射的に腰を下ろす。 慎文も和幸を追いかけるようにベッドに乗り上げてきたところで、鼻と鼻が触れ合った。  目視で判断できる程、慎文のスラックスの中心部が盛り上がっている。明らかにその先を望んだ行動であることは分かった。 「カズくん……」  拒まれることを恐れているのか、鼻を擦り合わせだけで、何度も口を開いて動作はしてくるものの、先ほどのようにキスをしてこない。  多分このキスを受け入れるということは、この先の慎文との行為に同意したという意味を示すことになるのだろう。 途端に緊張感が差し迫ってきて、唾を飲みこんだ。 此奴とのこの先が怖くないと言えば嘘になる。 だけど拒絶だとか、情けで受け入れたいだとかではなかった。  受け入れられるのならば、受け入れたいし、拒む理由なんてない……。  和幸は喉を鳴らして小さく呼吸を整えると自ら慎文の唇に己の唇を重ねた。  背中を抱かれながら押し倒されて、息継ぎもままならないまま、更に深く慎文の舌先が滑り込んでくる。  声が漏れ出しそうなくらい、甘い。慎文は想いを訴えるかのようなキスを夢中でしてきた。
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