chapter⑨

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それに問題はそれだけではなく、家族にも和幸と付き合っていることを話さなければいけなくなる。 両親は昔の人だから、一般的な男女の結婚が当たり前なことだと信じて疑わないし、男は働きに出て女は家庭のことをするという固定概念を持っている。  和幸とは血縁関係を結びたくても彼がどう思っているかも分からないし、慎文自身の願いだけでは簡単に話を進めることができない。  聞きたくても和幸から聞けていない、好きと言う言葉。 心の繋がりに和幸との確証を得られないもどかしさ。 「そうだ、慎文。昨日はごめんな」 「ううん」  角食を頬張りながら、考え事をしていると和幸に問われて顔をあげる。 「和幸、最近忙しいんだよね?昨日も疲れてそうだったから」 「ああ……。上司が春先に移動になるからその引継ぎがあったり、来月から新入社員が入ったり、その準備でドタバタしていてさ、もっと電話で話したいことあったんじゃないのか?」  毎日電話をする約束をした、此方へ来る前の前日の夜も三十分だけ通話をした。 バスに乗る前の十八時に電話したものの、開始早々、慎文が近況報告をしている間に和幸が寝落ちてしまい、大して話ができずに終わった。 「ううん、大したことじゃないから。それに今こうして和幸に会えてるし」 「そうか……」  慎文の言葉にあっさり納得して食事に戻ってしまったか和幸に寂しく思いながら、自分も静かに食事をする。  表面上では強がっていい子のフリをしていていても、内心では和幸と電話をしていたかったのが本心だった。 会う約束をしていたとしても電話はギリギリまでして和幸の声を聴いていたかった。慎文は自分が思う以上の我が儘な心を持っていることに罪悪感さえ覚えていた。
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