chapter⑨

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朝食後、家で和幸と昔の頃のようにテレビゲームをした。 ゲームなどあまりしてこなかった慎文にとって、すごろくのようなパーティゲームなど初見のものばかりではあったが、センスがあるのか回数を重ねていくうちに和幸より上手くなっていた。  ミニゲームをして負けて悔しがる大人げない和幸が可愛くて笑顔が綻ぶ。 一時間程してゲームにも飽きてきた頃、和幸に「散歩にでも行くか?」と提案されて、慎文は首を大きく盾に振って賛同した。  散歩と言うのでてっきり近くの公園を歩くものばかりと思っていたが、和幸の車に乗せられて、街から少しだけ外れた所にある自然公園へと来た。 和幸曰く、此処は春になると桜が満開で綺麗だと言うが、生憎時期が早いのか蕾はあるものの満開ではない。  枯れ木ばかりが立ち並ぶ並木道をゆっくり慎文と並んで歩いていた。 「桜はまだ早かったな……。寒いだろ」 「ううん、俺は平気だけど和幸、寒がりだもんね」    さりげなく右手を伸ばして和幸の左手に重ね合わせる。 周りに人は多くないとはいえ、和幸は周りの目を気にする性格だから離されてしまうかもしれない。 そんな不安を過らせながら指を絡ませてみると、和幸は一瞬だけ躊躇う表情を見せたが握り返してくれたことに胸を撫で下ろす。 「桜って五月だっけ……」 「ああ、丁度ゴールデンウィークあたりが見ごろだと思う」 「和幸とお花見したいな……」  慎文が来ると言ったら真冬しか来ていないので、ほぼ真っ白な街並みしか見たことがない。ちゃんとした街の景色を見るのはほぼ初めてに近かった。  和幸と正式な恋人同士になったのであれば、四季を感じながらも一緒に過ごしたいと思うようになった。 夏は海に行きたいし、秋は紅葉、冬はスキーとかも楽しそうだった。 「お前は、ゴールデンウィークはこっち来ないのか?」 「うーん……。行きたいけど、分からない」 和幸と行きたいところが沢山あるが、現状では頻繁に家をあけるわけにいかない。彼の休みの時は真っ先に会いに行きたい気持ちはあるのに……。 「だよな……。まぁ、俺が帰ればいい話なんだけど」 「和幸は帰ってくる予定はないの?」 「ないことはないけど……。お前とのことがあるし……」  どこか歯切れ悪そうにこめかみを掻きながら返答をしてくる和幸に首を傾げながら「俺とのことって……」と問うてみると「いや、何でもない……」と突き返されてしまった。  慎文の問いから逃げるように繋いだ手を離し、足早に歩きを進めた和幸に違和感を覚える。 「お前とのこと」といえば、慎文と和幸が付き合っていることくらいしかない。  和幸が実家に帰ることで何か不都合でもあるんだろうか。 彼の真意を聞く勇気もなく鬱屈としたまま、彼のことを駆け足で追いかけた。
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