chapter⑨

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散歩帰りにスーパーマーケットに寄り、晩御飯の買い出しをしてから帰宅した。 最初は和幸に外食でもするかと提案されたが、彼の為に此方へ来たのだから自分の手料理を食べさせたかった。 和幸と二人きりの食事を終え、珈琲を片手にソファに和幸と並んで座っては映画を観る。 表面上ではゆっくりと時間が流れていくような夜を過ごしていたが、慎文自身は映画の内容など頭に入っていなかった。  朝にお預けを食らってから、夜が深まるにつれて慎文の中で和幸を抱きたい欲が強まる。 だからと言って、画面に集中している和幸を遮ってまで悪戯を仕掛けるのも、鬱陶しがられそうで躊躇っていた。  漸く映画のエンドロールが流れて、欲に負けずに乗り越えられたことから、ホッっと安堵の息を吐く。 そろそろ誘ってもいいかな……と思い、和幸の手を握ろうとしたところで、彼が急に珈琲のマグカップを持ってソファから立ち上がった。 「慎文、先に風呂入れよ」 「あ、うん……」  映画を観ている間、何度も誘うシミュレーションをしていたのに、彼の一言で意図も簡単に崩されてしまう。 曖昧な返事で肯定してみたが、だからと言って素直に和幸の言うことを訊くのもタイミングを逃してしまいそうで、慎文は両膝をすり合わせたままソファから動かずにいた。 「おい、入らないのか?お前が入らないなら俺が入るけど」  そう言い残してマグカップをキッチンへ置くと、リビング外の脱衣所へと向かおうとする和幸を追いかけては、服の裾を掴んで引き留めた。 「か、かず、かずゆきと……。和幸と一緒に入りたいなぁって思って……」  きっとあまりいい返事はもらえないと分かっていても、お風呂でラブラブするのが慎文の憧れでもあった。  緊張で逸らしたくなる顔を逸らさずにじっと見つめて返事を割っていると、和幸の首筋が徐々に赤くなり始めた。 「別に構わない……。昔だって一緒に入ったことあったし」  首元を右手で摩り、目を泳がせながらも承諾してくれた和幸が嬉しくて背後から彼に抱き着く。 和幸の首元に顔を埋めて唇で甘噛みしてみると、彼の体がビクリと震えていた。
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