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「言うべきだったとかじゃなかったとかそんなのどうでもいいよ。和幸は俺のことどう思ってるの?俺とずっと一緒になりたいとか思わないの?俺はこんなに和幸のことが好きなのに、やっぱり和幸は俺のことそんなに好きじゃないの?」
頬に涙を伝わせながら、此処が外であるということも忘れて声を荒らげて訴える。八つ当たりするように和幸の肩を拳で何度も叩くと、両手首を掴まれた。
「慎文、落ち着け」
顔を覗き込まれている気配はするが真面に顔を向けられず、目を伏せる。
和幸も自分と同じような熱量でいてほしい。俺がいなきゃダメなくらい必要とされたい。
あれが叶えばそれが欲しくなるように、最初は控えめだった願いも恋人になることが叶えば和幸とずっと一緒にいたくなる。
こんな我が儘は呆れられて当然だと思っていた。ましてや和幸と想いが通じ合えてまだ日が浅い。ゆっくりと二人の愛を育んでいけばいいとどっしりと構えて、そう急ぐ話でもないはずだった。
しかし、頭と心はまた別の話で十年以上想い続けた期間が長かったが故に、焦る気持ちが抑えられない。
「俺は……。お前のこと」
ゆっくりと動く和幸の唇をじっと見つめる。自分で問うたものの和幸に「好きじゃない」と言われたらショックで立ち直れない。聞きたいけど怖くて聞きたくない。
「……思ってるよ」
手首を離されて顔を背けた和幸が微かな声量で呟く。よく聞き取れなくて首を傾げて聞き返すと和幸が勢いよく立ち上がった。
「俺は、お前とずっと一緒がいいって思てるよ」
「えっ……」
和幸のことだから適当にはぐらかされるのではと疑心暗鬼だっただけに予想外の返答に唖然とする。
「だからお前とのことは慎重に行きたかった。お前と会う頻度だって年一じゃ足りないことくらいは分かったし、慎文は家業があるから頻繁にこっちに来れないことは分かっていたから、俺が行くことも考えてた。けれど、今まで音信不通だった息子が帰ってきたら親に怪しまれるだろ?ましてや田舎だからお前と軽率にデートなんかして噂が広まっても困るだろうし、だから頃合いを見てお前とのこと話すのが先だと思ってた」
何かが吹っ切れたように和幸の口から浮足が立つような嬉しい言葉が次々と出てくる。和幸が地元に帰省して会いに来てくれることまで考えていたなんて思わなかった。
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