(21)すぐカップリングしたくなります

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 アンドロマケは、手早くヘクトルの衣の帯を締める。  侍女たちが部屋に入り、テーブルにパンとワインを並べた。 「あなた、人に指図するのは得意ですが、話を聞くことは苦手ですよね」 「あのカッサンドラが男と二人で来たのだぞ。お前も勘違いするに決まっている」 「それはヘクトル様が、カッサンドラ様の結婚をお望みだからですわ」 「兄としては当然だ」  ヘクトルは口を尖らせるが、アンドロマケは意に介さず夫の身支度を済ませる。  館の女主人は、義妹カッサンドラに「アポロン様のお告げのことですね?」と、問いかけた。  カッサンドラが無言で頷くと、アンドロマケは「みなさま、心行くまで話し合われた方がよいかと」と頭を垂れ去っていった。  ヘクトルは「俺は、勘違いをしたようだな」と腰掛け、テーブルでパンをかじるトリファントスを見つめる。 「賢者殿、カッサンドラを傷つけるつもりはないと言っていたが、何があったのだ」 「お兄様、そのようなこと、私は気に留めておりません」  いきり立つ王女に未来人は手を振って頭を下げる。 「カッサンドラさん、さっきは本当にすみませんでした。ヘクトルさん、あのですね」  トリファントスはかじったパンをテーブルに置いて、トロイアの王子に向き直った。
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