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2「はじめてのおつかい」は、三度もやり直す ~異世界の単位~
いろいろあったが、狩人パリスは、村に流行る病の謎を探るため、町に出た。
そこでヒポクラテスという医師の噂を聞きつけた。
彼の手にかかると、どんな患者でもたちまち病から快癒するらしい。
彼の診療所には、隣国からも患者が訪れるとか……隣国から来られるぐらいなら元気なんじゃないの? と突っ込む方もいるだろうが、当時だって、救急車ぐらいあった。あったはず。あったの!
──パリスの物語を続けよう。
彼は、ヒポクラテスに弟子入りして病気について学ぼう、と決意した。
評判の医師だ。簡単には弟子入りできないだろう。
が、何度も訪れ誠意を見せれば、願いはかなうに違いない。
田舎から出た素朴な青年は、診療所を訪れた。
「先生、どうか僕を弟子にしてください」
「いーよ~ん」
え! 先生、あっさりオーケーしちゃっていいの? 普通、三回は断るのがセオリーってもんじゃないの?
戸惑うパリスにヒポクラテスは続ける。
「その代わり、わしの頼み、聞いてくれる~?」
キターーーーーー最初のイベント!
難題クエストを頼まれるに違いない。と、パリスは顔を輝かせる。
・ダンジョンに潜って、化け物ミノタウロスを倒せ、とか?
・オリンポス山に昇って、ゼウスの杖を盗め、とか?
できれば最初のイベントに適した難度であってほしい……いや、そんなことじゃ魔王は倒せない! あ、これ、なんちゃって古代ギリシャ設定だ。ギリシャに魔王はいないんだっけ? まあラスボス登場はまだまだ先。それまでに決めりゃいいか。
──話を続けよう。
医師はパリスに使命を告げた。
「市場に行って、オリーブの実、100グラム買ってきてちょ」
え? そんな簡単なイベントでいいんですか? 田舎の狩人は拍子抜けする。
いや、もしかするとその市場に問題があるのかもしれない。
「市場ってとんでもなく遠いところにあるんですか? エジプト? それともペルシャ?」
「いんや、歩いて10分じゃ。これお金。いってきてちょ~」
ヒポクラテスは、千円札をパリスに渡して見送った。
パリスは困惑する。
最初のクエストとはいえ、こんな「はじめてのおつかい」でいいんだろうか?
いや、ここから先、トラップが発生するに違いない。強盗に遭い、お金を盗まれるとか。
でも、僕は何があっても負けないぞ!
決意したパリスが診療所を出た途端、そのトラップは発生した。
お金を盗まれるなんて、初心者レベルではない。
時間の神クロノスが現れ、時間を巻き戻してしまったのである!
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