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留学生との出会い
夏休みが終わり、始業式の朝。いつものように通学路を歩いていたら綺麗な金髪に空色の瞳の美青年に話しかけられた。
「あの、聖青春学園って何処にあるか分かりますか?」
なぜ学校の場所を訊くのかと不審に思ったが、同じ制服を着ていたので留学生か何かなのだろうと考えた。
「あっ、えと、俺も同じ学校なので一緒に行きましょうか?」
同じ学校の人とはいえ、知らない人に一緒に行こうと言うのは思ったより勇気が必要だった。反応を見るのが怖くてチラっと顔を見ると
「いいんですか!ありがとうございます!」
と人懐っこい笑みでお礼を言われた。キモいなどと思われてなくて良かったと安心した。
「俺は鈴鹿湊、高校2年生。君は留学生…かな?」
「はい!今日からこの学校に留学するアッシュ・リアムです。出身地はアメリカ。高校2年生だからミナト君と同い年ですね!」
それを聞いて驚いた。背が高く、大人びた様子だったので上の学年だと思い込んでいた。
「そうなんだ、じゃあ敬語じゃなくていい。困った事があったら聞いていいから。」
命令のような言い方になってしまったと内心焦ったが気にする様子はなかった。
「ありがとうござ、じゃなかった…ありがとう!」
言い直すところを見て可愛いな、なんて少しだけ思った。
「アッシュ君は凄く日本語上手なんだね。」
「うん!日本語は頑張って勉強したんだー。そう言って貰えると嬉しいよ!」
「アメリカから来たんだよね。アッシュ君の学校はなんて名前なの?」
「エレメンタリーアカデミーってところだよ!」
「へぇ、なんか凄いね。」
そんな事を話していたら学校に到着していた。
「ここが学校だよ。」
「本当にありがとう!ミナト君は優しいね!」
優しいと言われるような事はしていないが、褒められて悪い気はしなかった。
始業式。校長先生の退屈な話が終わり、生徒達は教室へ戻っていく。
皆んなが席に座ると先生が口を開いた。
「はい、今日はなんと留学生がきている。慣れない事も多いだろうから率先して手助けをするように。」
「え…女子!?」
「女子な訳ねーだろ馬鹿野郎!」
一気に教室が騒がしくなる、俺達にとっては初めての留学生だから無理もない。
「入ってきて良いぞ。」
ガラガラと扉が音を立てて開き、入ってきたのは…アッシュ君だった。
「アッシュ・リアムです。アメリカから来ました。約三ヶ月の間ですがよろしくお願いします。」
「リアム君だ。拍手。」
まばらな拍手と共に「イケメンじゃね?」「背高っ!180あるだろ。」という其々の感想が聞こえた。
「リアム君に質問がある人ー」
「はいはーい!」
元気に手を挙げたのは田中拓也。クラスの中心的存在で俺みたいな陰キャにも優しく接してくれるいい奴だ。
「彼女いますかー!」初っ端から拓也君らしい質問に笑いが起こる。
「彼女かぁ、いないなー」
アッシュ君は戸惑いながらもしっかり受け答えをしていた。
「はい!好きなタイプー!」
「タイプ、優しい人かな!」
「うわ、回答すらもイケメン…」「勝てっこねぇー!」
その後、生徒達は何回か質問を投げかけ、もう手が挙がらなくなった。
「もういないなー?席は〜、じゃあ鈴鹿の隣。」
アッシュ君は先生が指差した席を見てから俺の方を見た。俺に気付いたようでパアッと顔を輝かせながら俺の隣に向かって進んで来た。
アッシュ君が席に着くと、先生がこれからの持ち物や服装について話しだす。
話を聞いていたらトントンと肩を叩かれた。
「ミナト君!同じクラスだね、嬉しいなぁ!」
「俺も嬉しいよ。隣の席だし。」
「うん!あの、さ」
「?どうしたの?」
緊張した様子で話すので身構えていたら
「…今日良かったら一緒に帰らない?」
と言われた。そんなに勇気を出して言うことか、と思わず笑ってしまう。
「あ、笑ったな!もー!」といって恥ずかしがるので更に笑いが込み上げてくる。
すると「そこ、静かにー」と先生に注意されてしまった。
それさえ面白くて俺らは顔を見合わせて笑う。
何かが始まる予感がした。
今日は始業式だけなのでもう帰れる。だけど、留学生が珍しくて皆んなアッシュ君の席に集まっていた。
「なあなあ、どっから来たの?」
「アメリカからだよー」
「近くで見てもかっこいいなー」
「そう、かな?ありがとう。」
質問コーナーは終わったのに次々質問が投げ掛けられ、アッシュ君は丁寧に返答する。
それが結構の間続き、約束を忘れてしまったのかな、と悲しくなった。
まだ長くなりそうだったので、帰ることにした。何も言わないで帰るのは感じが悪いと思ったので小さい声で「じゃあ、また明日」と言って席を立つと、慌てたようにアッシュ君も席を立ち
「ごめん、ボクもそろそろ帰るよ」と小走りで俺に続いた。
「あいつら仲良いなー。てか黒髪のやつの名前なんだっけ?」
「えーと…確か鈴鹿!」
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