7人が本棚に入れています
本棚に追加
帰る約束
「ごめん、皆んなと話してたら帰るの遅くなっちゃったね。」
アッシュ君は申し訳なさそうに謝る。謝るとしたら俺の方だ、勝手に先に帰ろうとしたのだから。それに俺がやきもきする理由なんてない、アッシュ君は初日にクラスメイトと話していただけなのに。
「大丈夫だよ。良かったじゃん、友達出来てさ。話し続けてくれても良かったのに。」
アッシュ君は悪くないのにツンケンした言い方になってしまって心の中で自分を非難する。
「うーん…でもボクはミナト君と帰りたかったから。約束もしたし。」
「あ、覚えてたんだ。」俺と帰りたいと言ってくれて嬉しかった。
でも、なんでだろう、自分の心臓の音がうるさい。
「当たり前だよ!ボクから誘ったんだし。…あ、ここボクの家!」
そう言って指差した家は、俺の隣の家だった。
「え…俺の家はここ!」
「席も家も隣なんてボク達、見えない繋がりがあるのかもね!」
「なるべくして友達になった的な!…あー家も隣だしさ、明日からも一緒に登下校しない…?あ、勿論嫌だったら断って。」
今度は俺が勇気を出す番だった。さっきは笑っていたが、いざ自分が提案するとなるとやはり緊張する。声も少し震えていたかもしれない。
「いいの⁉︎ボクもそう思ってたんだー!」
子供のように目を輝かせながら笑う。やっぱり表情がコロコロ変わる愛らしい人だなと感じた。
「良かったぁ、じゃあまた明日ー」
アッシュ君と別れ、家に入ると母さんが出迎えてくれた。
「おかえり湊。ご飯できてるわよー」
「ありがとう。すぐ行く。」
部屋に戻り制服を着替えてダイニングに向かう。
「始業式どうだった?お友達は出来た?」
食べて早々色んな事を質問をしてきた。
「別に普通だよ。……でも留学生の友達が出来た。」
「あら!今夜は赤飯ねー!」
母さんは俺に友達が出来たことを自分の事のように喜ぶ。
「大袈裟だよ…」
ご飯を食べ終わり、少しの間お腹休めしているとインターホンが鳴った。
はーい、と言いながら母さんがドアを開けると、アッシュ君が立っていた。
「こんにちは。今日から約三ヶ月間、隣に住ませていただくアッシュ・リアムです。よろしくお願いします。これ、粗品ですが。」
そう言ってお菓子の詰め合わせを差し出す。
「礼儀正しい子ね〜こちらこそよろしくね!」
「はい!では、失礼します。」
ドアが閉められる。
「かっこいい子ね、湊と年齢近いんじゃない?」
「うん。あの子がさっき言った留学生だよ。」
「えぇ!湊も挨拶すれば良かったのに」
「明日会うから大丈夫。俺、部屋に戻るね。」
最初のコメントを投稿しよう!