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体育祭の練習
一週間後、アッシュも学校に慣れてきて、拓也のお陰で俺にも少し友達ができてきた。
ある日の朝、教室に入って来た先生が話し始める。
「席に座れー。皆んなも知っていると思うが、もうすぐ…体育祭だ!」
「うおぉぉぉ!」体育祭は毎年盛り上がる行事の一つだ。生徒からも大きな歓声が上がる。
「静かに、話を続けるぞ。授業も体育が増える。時間厳守を心掛けろ。」
「こっちにいる間に体育祭参加出来るのはラッキーだなぁ!憧れてたんだよねー!」
アッシュは待ちきれないと言った様子だった。
「憧れてたって、アメリカには体育祭ないの?」
「うーん。field dayっていう似たようなのならあるけど、ちょっと違うんだよねー。だから楽しみ!ミナトは楽しみじゃないの?」
「俺、運動苦手でさ。でも、今年はアッシュもいるしちょっとワクワクしてる!」
アッシュや拓也と参加できると思うと楽しみだが、俺は運動が得意ではない。だから足を引っ張らないか心配だった。
「お!湊とアッシュー。体育祭楽しみだな!一時間目から体育だから着替えようぜー」
拓也も目を輝かせながら体育祭について話す。拓也は野球部だから運動ができるし、体育祭も拓也居るだけで盛り上がる。
「そうだね!さっさと着替えちゃおう!」
俺たちは着替えて体育館に向かった。
「水筒はここ、シューズは…」アッシュに物の置き場所を教えていたら、先生がきて駆け足で整列した。
「今日は早く走るコツなどを教えていく。まず、腕はできるだけ大きく振ってー…」
先生が走り方を教えて、それを生徒が実践するといった形で授業は進んでいった。
「よし、じゃあ実際に100m走ってみよう。走り終わったらタイムを聞き、後で先生に報告。適当に四人組を作れー。」
チームは俺とさっきまで一緒にいたアッシュと拓也。そして近くにいた山本君だった。
「足の速い人が多いチームになっちゃったな。あんまり話した事は無かったけどよろしく。」
山本康平。しっかりしていて優しい優等生、頭がいい。あまり話した事はないが、俺にも笑顔で話しかけてくれる良い人だ。
「俺はそんなに速くないと思うけど…」
「またまた、そう言う事言ってる人こそ速いんだよー。」
本当に速くないから困る、十中八九お世辞だろうけど。
俺たちの番になり、クラウチングスタートの姿勢で待つ。
「位置について。よーい、ドン!」
スタートの合図となる旗が勢いよく上がる。
走り出したばかりなのに、もうアッシュと拓也の背中がみえた。
できる限り足を早く動かして走る。
ようやくゴールを越え、走る力を緩めた。「はぁ、はぁ。何秒、だった…?」「鈴鹿さん…8秒48だね。」
9秒を切っていて思わずガッツポーズをする。水筒が置いてあるところに行くと、先にアッシュがいた。
「アッシュ!凄い速かったね。何秒?」「ボクは7秒32だったよ。ミナトは?」
「7秒台!速いなぁ。俺は8秒48だったよ…」
「運動苦手って言ってたけど8秒台も凄いよ!」
「はは、ありがとう。」
7秒台に凄いって言われてもな、悪気はないんだろうけど。
「おー皆んなー!」「あ、拓也、山本君!何秒だった?」
「俺は7秒46。くっそー!ギリギリアッシュに負けたー!」
拓也は全力で悔しがっていた。
「僕は9秒08だったよ。やっぱり皆んな速いね、悔しいな。」
山本君は悔しい、と言っている割には悔しそうではなかった。
その後も玉入れの練習にダンスの練習、あっという間に四時間が過ぎた。
「っかぁー!疲れたぁー!!腹減ったー!」
「そうだね。僕もヘトヘトだよ。」
体育の授業の流れで、山本君も一緒にお弁当を食べることになった。
「てかアッシュ運動もできるのなー。なんかやってたか?」拓也が訊ねる。
それに関しては俺も気になっていた。拓也の運動神経は野球で養ったものだ、簡単に超えられるものではない。
「うん、バスケをやってたんだよね。7歳くらいから。」
「成程、バスケは色んな能力が必要な競技だからね。僕はドリブルをしていたらボールがなくなっていたよ。」と山本君。
バスケか…アッシュがドリブルをしたりシュートをしている姿が頭に浮かぶ。
「…見てみたいな」気づけば、そう口から出ていた。
「それなー!俺も見てぇわ!」
「僕も興味あるな。」
拓也と山本君も同感する。
「先生に聞いた話だと10月の体育はバスケらしいからそこで見れるね。」
「さっすが優等生!頼りになるぅ!」
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