証言

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「おい!早く先生呼んでこい!ちっ、また始めやがった。ったく、こっちまで寝られやしねえ……」 Aさんの証言 「そう、この赤い屋根の家は、一家四人惨殺事件の現場なんですよ。ご両親と7才のお姉ちゃんと3才の妹さんの4人家族でね。みんなとっても仲良く幸せそうに暮らしていたんですがねえ。本当、あんなことになっちゃって。 このお家なんですがね。夕暮れ時になると、リビングの窓にひとりでにほんのりと灯りがともるんです。そして、みんなが幸せそうにご飯を食べてる様子がぼうっと浮かぶんですよ。外からもはっきり見えるんです。ここのご近所の人はみんな知ってます。はい、私も実際、何度もこの目で見ましたよ。四人で囲むテーブルクロスの柄まで、はっきりと見えるんです。 ええ、そりゃあ勿論怖いですよ。みんなとっくに亡くなった人たちなんですからね。でもね、それ以上にあまりにも可哀想でねえ……犯人も、そのまま逃げちまって捕まってないんですからねえ。本当、あれじゃ浮かばれませんよ」 Bさんの証言 「この通りの三軒先、そう、丁度あそこの交差点の所、かわいいお家が建ってたんですけど、この間焼けちゃったんですよね。で、その焼け跡から老夫婦のご遺体が見つかったんですよ。強盗がお家に押し入って、生きてる間に縛り上げて金目のものを奪って、殺してから証拠隠滅の為に火をつけて、そのまま逃げたんですよね。本当に酷い話ですよ。ええ、私も顔見知りでしたよ。ご近所さんですからね。本当に愛想の良いご夫婦でね。年金暮らしだけど、慎ましく、幸せそうに暮らしてらっしゃいましたよ、私もお手製のジャムとか頂いたことがあるんです。いつか何かお返ししなきゃ、と思ってたんですけどね……何も出来ないまま、こんな事になってしまって……本当にもっと色々お話しておけば良かった。 で、その焼け跡からね。夜になるとご夫婦のすすり泣く声が聞こえてくるんですよ。本当に悲しそうな、恨めしそうな、むせび泣くような声でねえ。まだ、成仏出来てないんでしょう。そりゃ、死んでも死に切れないでしょうね。 ええ、私だって怖いですよ。でも、それ以上にお気の毒でねえ。押し込み強盗に殺されて、無念の思いで成仏も出来ないなんて、二重の意味で惨たらしい話だと思いませんか?犯人も、まだ捕まってないんですからね。このままじゃ浮かばれるわけないでしょうよ。まったく」 Cさんの証言 「うわあーっ!また出やがった!女だ!あの女だよお。嫌だ、離せ!離してくれよ!お前ら見えねえのか?ほら、そこのドアのところに女が立ってんじゃねえか。見えねえのかよ!嫌だ、もう嫌だ。助けてくれ!許してくれ!勘弁してくれ!毎晩毎晩、もう気が狂いそうだよお。俺が悪かった。許してくれ。許してくれよ。でも、俺だけじゃねえだろ!あんな所で若い女見たら、誰だってやりたくなるだろうがよお。しかも、あんたみたいないい女なんてよお、なあ、きひひひひひひひひひ。でも俺は一回だけだっただろ?他のみんなは二巡してたじゃねえか。な、そうだろ?覚えてるよ。だって、俺、二回目はふにゃけちまってたからさ、横で見てて悔しかったからよく覚えてんだよ、ぐひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。それに、あんたの命を奪ったのは俺じゃねえだろ?なあ?あんたを殺したのは金髪のひょろっとした優男だったろ。な?だからあいつの所に出てくれよ!もう俺の所に出ないでくれよお!許してくれよお。勘弁してくれよお……うわあーっ!ぎゃあーっ!こっちに来るなあーっ!女だ、あの女だあーっ!」 「先生、おせえよ!早く鎮静剤!いいから、そのままぶっ刺せ!ったく、毎晩毎晩……」 "……キーフ近郊のボチャでは、ルシケ軍による民間人の大量虐殺の実態が次々と明るみになっています。国際社会はこれを明らかな戦争犯罪であるとみなし、各国からこれを厳しく非難する声が……" 「うわあーっ!やめろおーっ!来るな、こっちに来るなあーっ!」 「もしもし!もしもし!どうしました!?おい、早く医務室に連絡!もしもし、大丈夫ですか!?とにかく、扉を開けてください!閣下!大統領閣下!」 [了]
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