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いつもの校舎裏での昼食。ボッチな僕は包
帯グルグル巻きの右手の代わりに左手で箸を握り、母さんが作ったお弁当と格闘していた。
昨日の帰りにデパートで起きた人生最悪最恐の事件。
お陰でこの有様です、トホホ。
◆
学校帰りにラノベを買いに寄ったデパート。夕方の混む時間だけあって、エレベーターの中は混雑していた。
「あ、あれ!」
誰かがエレベーターの天井に張り付く黒い生き物に気が付いた。暗黒の大魔王………。
お喋りに花を咲かせていたOLのお姉様達も黙らせる強者だ。僕を含め、そこにいた全員が固唾を飲み神に祈った。
(((飛ぶなよ……)))
サササササ…ポロ
「「「あ゛っ」」」
ポロリと落ちた暗黒大魔王。
バサアアアアアア!
暗黒大魔王は黒い翼を広げ狭いエレベーター内を飛び回る!
「「「うぎゃああああああ!」」」
この平和な日本で起きた阿鼻叫喚の地獄絵図!
閉じられたエレベーターに逃げ場は無い!
バサアアアアアアアアアアアア!!!
「ヒイイイ~」「キャアアア」「助けてえええ」
人間の恐怖する姿を嘲笑うかの様に蹂躙する暗黒の翼。
そしてヤツは標的を決め一直線に飛ぶ。
狙われたのは僕の隣にいた女子学生だ。
「いやあああああああああ~」
狭いエレベーターに響く女の子の叫び声。しかし黒い悪魔に抗える者など誰もいない!いない筈だった。
「あっ」
僕は無造作に右手を伸ばし暗黒大魔王を掴んでしまった……。
「痛い痛い痛い痛い!
噛んでる噛んでる噛んでる噛んでる!
痛い痛い痛い痛いいいいいいい!!!」
凶悪な牙で、掴んだ僕の手をカリカリと噛み捲っている暗黒大魔王!
余りの痛さに手を開こうとする僕。
ガシッ!
ごつい手が僕の手を包む。
「良くやったぞ少年!」
ごついおっさんのごつい手が僕の手をガッチリと覆っていた。
「カリカリカリカリカリ」
「痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
チーン♪
何処かのフロアに着いたエレベーターの扉が開く。ごついおっさんは僕の手を握ったまま外に飛び出す。
エレベーターの外に出た僕が右手を開くと暗黒大魔王はササササササと何処かに逃げていった。
「頑張ったな少年!医務室に行くぞ!」
そうして僕はごついおっさんに連れられて医務室に行き、僕の右手はグルグル巻きの包帯姿となったのだ。
僕………死なないよね?
◆
そんな酷い目にあい、お陰でお弁当も禄に食べられない。っていうか母よ、僕、おにぎりとフォーク使えるヤツでって言ったよね!
「あ……あの~」
お弁当に影が差して見上げるとそこには美少女がいたよ?
「き、昨日は助けて頂きありがとう御座いました!」
「えっ?」
「昨日、エレベーターで助けてくれました!本当にありがとう御座いました!」
昨日、僕が助けた女の子は男子生徒憧れの美少女である桐生天音さんだったようです。
最悪の昨日は、最良のご褒美を僕にくれた。
「笠平君、ハイ、あ~ん」
パク
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