嘘みたいな本当の

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「就職……出来ませんよ?」 「え」 何て? しかし、激しく動揺する私をよそに、占い師は容赦なく言葉を続けていく。 「……残念ながら、貴方は、就職は出来ない様ですよ?将門公がですね、貴方が片時も離れずに、この坊やの傍にいるのを望んでおられるのです」 「そんな……。じゃぁ、私は一生、働けないんですか?」 と、私の言葉に占い師が重々しく首を横に振る。 「正確に言えば……就職、出来ない訳ではないのです。ただ、将門公の妨害が入るので、ちょっと……」 ここで、占い師が初めて、言いにくそうに言葉を詰まらせた。 (……そこまで言いづらい結果なのか?) 私は息を飲む。 と、覚悟を決めた様な瞳で、占い師が言葉の先を語り出した。 「……まともな職場に就職するのは、かなり、難しいかもしれません」 それは、つまり――? 「働くなら、ブラック企業ばかりってことですか……?」 「はい」 即答され、軽くへこむ私。 しかし、そんな私に追い打ちをかける様に、占い師は尚も見えた結果とやらをつらつらと述べていく。 「将門公が、貴方に勤めて欲しくないと強く念じている影響で、貴方は……通常の人が長く働ける様な職場とは縁が無い様です」 なんてことだ。 高校生の内から、お先真っ暗な未来が決定してしまった。 (……働いてみたい会社や、興味のある職種が沢山あったのに) 自分の暗澹たる将来を憂い、私が心の底から落ち込んでいると、健悟がとことこと隣にやって来る。 そうして、ひょいっと、俯く私の顔を覗き込むと、わざとらしく――しかし、腹立たしい位に可愛らしい笑顔を作り、こう言って来た。 「養ってあげてもいいのよ?」 「結構だ!」 健悟の有り難くもない申し出を即答で断る私。 「誰が君の世話になるか。というか、私は信じないからな。よく、占いは当たるも八卦当たらぬも八卦というだろう?なら、私が幸せな職場で働ける未来もあるかもしれないじゃないか」 そう、きっとそういう未来だってあるに違いない。 私は自分に言い聞かせる様に、言い切った。 そんな私をにやにやしながら見てくる健悟。 とても楽しそうな表情で見つめてくる健悟に、何となくムッとした私は、健悟の鼻先に軽くデコピンをする。 「いって!!何すんだよ!折角心配して言ってやったのに!!」 「ご心配ありがとう。でも、その心遣いは不要だよ。例え、世界が滅ぶ寸前になろうと、君の世話にだけは絶対にならないからね」 「言ったな!人の親切を無にしやがって!」 言うが早いか、健悟が私の向こう(ずね)を全力で蹴飛ばして来た。 「いっ……?!」 往来にも関わらず、思わず膝をつく私。 そんな私を見下ろしながら、健悟は尚も悪態をついて来る。 「優のばーかばーか!!!」 馬鹿は君の方だろうが。 (一体どんな力をしてるんだか……) 足を擦りながら、漸く立つ私。 私は、賑やかに囃し立ててくる健悟を見ながら、 (本当に……こいつにだけは、絶対に世話になるものか) と、改めて心に誓うのだった。
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