25メートルの匣

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 前の授業で既に濡れているプールサイドをつま先で歩いて自分の場所に座る。乾いた水着がプールサイドの水を吸ってぐちゃっとなる。ああ、気持ち悪い。キッチンやお風呂場など、水のある場所は汚いと、そう小さな頃から思って生きてきた。  だから、わたしはプールの時間も、このプールサイドも、どちらともが嫌いだった。それに、プールの授業は6年生と一緒だから。各クラスの人数が少ないわたしたちの学校はそれぞれ2学年ずつプールに入る。だから否応なしに奇数学年はひとつ年上の人たちと入らなくてはいけなくて、わたしはそれがどうしても嫌だった。あまり上手くない泳ぎを6年生に見られるのも嫌だったし、女の子どうしならまだしも、ひとつ年上の男の子に水着を見られるのが何よりも嫌だった。  少し膨らみ始めた胸を隠すように、体育座りをしてそれを隠す。完全に水を吸った水着が少し重くなって、それがわたしの気持ちとリンクしていく。
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