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「社長のお姉さんには息子さんがいらっしゃるのよ」
経理の柴田が社長室からアルバムを取ってきた。
「ほら、この人がお姉さんで、彼がご主人。抱っこされているのが息子さんよ」
社長が不器用ながらに撮った写真には、栗毛の赤ちゃんを抱く小柄な女性と、寄り添うように立つ、ブロンドヘアの男性が写っていた。
「お姉さん、社長にうり二つですね」
「えっ? そこ?」
「いや、ご主人は外国の方なんですね」
「そうなのよ。まあ、日本語は話せると思うんだけど……それより問題なのは、社長が姉家族と長い間、会ってなかった事なのよ」
「そうなんですか?」
「些細な喧嘩で、十年? いえ、もっとかしら」
「そんなに……」
「うん。だからほら、甥っ子って言ってたでしょう?」
「え?」
「あれ、まだ子供だと思ってるわよ」
「幾つくらいの人なんですか?」
「もう、三十歳は超えてるでしょうね」
「僕と同じ年代?」
「大丈夫かしら。これ、見てたわよ」
アルバムを取りに行った時に見つけたらしい旅行雑誌を手渡される。
「付箋を貼ってるページ見て」
「は、はい」
付箋が貼られたページには大きな観覧車が載っていた。
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