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「いや、まさか。会えば勘違いに気付くでしょうし」
「まあね」
「社長だって大人なんだし、機転くらい」
「機転、利くと思う?」
社長と甥が無言で観覧車に乗っている所を想像した。
「……」
「ま、甥っ子さんが、機転を利かせる事に期待しましょう」
これは面白い事になりそうだと思わず口元が緩む。
「三田くんは笑っている場合ではないと思うけどね」
「えっ?」
柴田の不吉な言葉が現実になる。
次の日の土曜日、社長に呼び出された遊園地の入り口で深いため息をついた。
「おい! 三田!」
のしのしと社長が一人の男性を連れて現れた。
「社長、そちらが甥御さん?」
「……うむ。そうだ。甥の海斗だ」
その男性を見て息を飲む。
「カイトです。どうぞ宜しく」
流暢な日本語で微笑んだブロンドヘアの男性は、どこからどう見ても外国人だ。
「社長のお姉さんのDNAはどこに……」
「なんだ」
「いえ。なんでもありません。あの、何で僕が呼ばれたんです?」
「お前、俺を殺す気か」
心臓をトントンと叩いた。社長は一度、心臓のバイパス手術をしたことがある。
「私、ジェットコースターが大好物なんです」
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