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しかし“シヴァ”は地面へ落ちる事もなく、周りに発生させた蒼い風を巧みに纏い、たちまちの内に主人と認めるシャークの手中へと落ち着いたのだった。
だが、オフィーリアにはそれすら計算済みで、僅かに生まれた隙を利用して、自らの身が安全な内に間合いを取ると、同時に地面に突き刺さったままの“アラストル”を回収する。
「……」
「……」
シャークと視線を交わし、攻撃する手立てを思考する。
双方まだまだ全力を出し切っていないとはいえ、長引けば確実にオフィーリアの方が不利な戦況となるだろう。
そうなる前に、決着をつけておきたいオフィーリアとしては、これという一手が欲しかった。
だが、シャーク相手に並みの小細工が通じるとは思えないため、仕方なく無意味に考える事を捨て、“アラストル”を構えた。
シャークもそれで“シヴァ”を構えると、激しい攻防戦が再開される。
リズムは一定ではない。さすが、“狂猫の騎士”と呼ばせるだけあって、長身に加えて鍛え上げた体躯の割には、猫のようにしなやかな身のこなしとスピードで翻弄してくる。
オフィーリアとて、動きに遅れを取ってはいない筈だったが、シャークの素早過ぎる動作と不規則なリズムによる攻撃に、どうしても防ぎ切れないものがあるのも、また事実であった。
しかし、初めからそうした実力差は理解していたため、致命傷になるような攻撃だけは防ぐ事に専念している。
その事に気付いている筈のシャークはだが、いまだ何のリアクションも見せてはこない。
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