第二章・ー死闘ー

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 それからはもう随分と長い時間、“アラストル”、“シヴァ”からは火花が散り続けているのだが、やがてシャークの方が変わらぬ戦況に飽きたのか、急速に踏み込むと空いている拳でストレートをかまそうとする。  予期せぬ行動に、即座に反応して避けようとしたのがいけなかった。  大袈裟な程のモーションによるストレートは囮で、反対側、視界の端に迫りくる、風の力を得てスピードを増した“シヴァ”に気付いた時には、既に遅かった。 「ーーっ!?」  肩口に、切っ先が貫通するまで深く“シヴァ”を突き立てられ、そのまま勢いで後方の壁へと背中から叩きつけられる。  道場内に響く衝撃音が、言わずとも衝突の激しさを物語っていた。 「……っ!」  それでもオフィーリアは、痛みに呻くどころか悲鳴の一つもあげず、力業で壁に縫い付けて冷酷な笑みを浮かべるシャークを、真正面から睨むのだ。  誰しもが何の声も発せられない中で、容赦なく圧されていき、みしみしと壁が軋む音だけが聞こえてくる。  “シヴァ”を突き立てた箇所から徐々に鮮血が滲み、オフィーリアの腕を伝って滴り落ちる様を見詰めて、シャークが残念そうに呟く。 「惜しいな。後もうちょいで、首を()れたのに」 「はっ……。残念やったな、馬鹿猫。自分なんぞにくれてやる命、俺は持っとらんわ」  非常に恐ろしい言葉を放たれても尚怯まず、嘲る笑いを見せながらオフィーリアが返した。 「()はないからな」  それがシャークの気に入らなかったらしく、不快そうな顔で眉を潜めると、地獄の底から聞こえてきそうな低い声音で放つ。
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