第二章・ー死闘ー

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 “シヴァ”からの応戦すら間に合わない速度で放たれた一撃ーー。  気付いた時にはシャークの腕が弧を描き、回転しながら両者の眼前へと転がり落ちたのだった。  斬り落とされたのは、先刻オフィーリアが入れた蹴りにより、折れてしまった腕の方ではなかった。  シャークが確認するまでもなく、明らかに無事な方の腕で、こちらの戦力を殺ぐためだと理解して、忌々しげに呻く。 「……調子に乗るなよ、オフィーリア……!」 「それはこっちの台詞じゃ、馬鹿猫……!」  これに“シヴァ”が怒り狂ったらしく、周囲に無数の疾風を発声させたかと思うと、オフィーリア目掛けて走らせる。  ここまできても尚、比較的冷静なオフィーリアは全て“アラストル”で受け流すのだが、その内幾つかは何故か軌道を逸れると、そのまま二人の試合に魅入っているラキへと、容赦なく向かったのだ。  最初、簡単に避けてくれるかと考えたのだが、予想に反してラキは微動だにしない。  このままでは直撃してしまうと、舌打ちして跳ぶ。  距離は遠い。だが、間に合わない事もないと、寸でのところでラキとの間に割って入ったオフィーリアが、“アラストル”を構え全ての疾風を受け流す。  そうして肩越しに吐き捨てた。 「()けぇや、自分」  その言葉にも、ラキは何の反応も示さない。  これ以上付き合っても仕方ないと、返事も聞かずにシャークを睨む。 「ごっめぇん。ちょっと手が滑った」  肝心のシャークはこんな感じで、ちっとも悪いと思っていないようだ。
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