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「……。別にええて。俺が勝手にやっとるだけやさかいに」
素直に手当てを受けながら言う様はどことなく元気というか、いつものような覇気がない。
何やら落ち込んでいるのかと聞いてみると、首を横に振られてしまった。
「初っ端馬鹿猫宛がうん、やっぱりキツかったやろか、思てただけ」
「う、うぅん……。ま、まぁ、オフィーリアが見た感じ、ヴェルセルク君の心が折れてる様子はなかったんでしょ? なら大丈夫じゃあないかな?」
治療を完了させて手を止めたシェイカーを見て、オフィーリアが言った。
「ここで立ち止まるようなら、それがあのクソ餓鬼の限界やっちゅうこっちゃ。せやけど、俺はいける思た。やからシャーク焚き付けたんやけどな」
「いつもウチの署員を気にかけて下さって、ありがとうございますぅ」
言われたエルファリスが、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて一礼する。
「やから。別にええよ。あくまでも俺が勝手にやっとるだけや」
しばらくそのままでいたが、やがてシャツもスーツも使い物にならなくなった事実を思い出すと、またも長いため息を吐く。
「……シェイカー、何や着るもん貸して」
よっぽど情けなく思っているのか、オフィーリアにしては珍しく頭を抱えると、半ば涙目での頼み事をしてくるのだ。
「う、うん。それは別に、全然良いんだけどさ……。本当に大丈夫なの?」
「あかん。全っ然あかん。今月俺、既に赤字やねん。着る服みんなあかんようなってまう。せやのに、もうすっからかんやねん。服買う金すらあらへん。このままやったら、食費すら危うい……」
オフィーリアが抱える事情を知っているだけに、どんな顔をすれば良いのか分からないシェイカーであったが、取り敢えずで打開策を提案した。
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