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言葉での説得を受けるより実戦で示されて身に染みた、「相手の力量を見極めてから喧嘩を売れ」という忠告を、不本意ながらもなるべく実行するようにし始めたのだ。
それからというもの、勝敗の保留という超絶不本意な事実を覆すために、人知れず、文字通り血の滲むような修行も鍛練を重ねるのも、一日たりとも怠ってはいない。
そんな風にすげなく返すラキを見詰め、相手は怯むどころか逆に赤い瞳を細めると、まるで新しい玩具でも見付けたかのような、楽しげな笑みを浮かべた。
「もしかしたら君……、かな? オフィーリアのお気に入りって。ふぅん。ほぉん。確かに、昔、一時期荒れてたオフィーリアに似てる気がするにゃあ」
語尾に「にゃあ」とか、猫みたいにしてふざけてんのかよ……、とか思ったラキであったが、何となくそこを突っ込んだら負けな気がするため、敢えてのスルーで顔をしかめた。
するとタイミング良くというか、またしても廊下の奥から、今度は慌てた様子で走ってくる足音が響いてきたのだ。
「済まんシェイカー! ここにうちの署員、きとらんか!?」
入ってきたのはイグレシオン署員ではなく、先刻ラキの脳裏を掠めた件の刑事、オフィーリア=コーラルブルーであった。
今日のオフィーリアは、柔らかそうな蒼い前髪で顔の右半分を隠して、コバルトブルーな上下のスーツに、ダークブルーのシャツにダークレッドのネクタイを着用している。
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