第一章・ー乱入ー

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「ちょっと、何だかオフィスが騒がしいからきてみたら、一体どうした……の」  奥からきたのは、イグレシオン署陰契課課長補佐のシェイカー=オフ=エディと、現課長のエルファリス=シェラ=ヴェスバニアであった。  シェイカーは肩口まで伸ばした金糸の髪を後ろで一つにまとめ、よれよれなブラックのワイシャツとノーネクタイ、ブラウンのスラックスといった出で立ちて、オフィスに立つ面々を前にフリーズしてしまう。  一方で、シェイカーの後ろに立つエルファリスは、赤く長い髪を腰までのばした、大人の女性というよりは、まだ幼さの残るあどけない美少女に近い外見で、オフィスにいる面々が一体誰であるかを確認しているようだ。 「あ、済まんシェイカー。また邪魔してもうて」 「あ、シェイカーじゃん。久し振り、元気だった?」 「……君達、何故ここにいるの」  反応はそれぞれで、まずまたしても不法侵入した事を謝ったオフィーリアとは対照的に、先刻までの一触即発な空気など忘れたかのような振る舞いのシャークを交互に見て、シェイカーが最後に呻く。 「いや……。ちょおシャークの阿保が、無理矢理乱入してもうて……。すぐ回収するさかい、堪忍したって」 「シェイカーさぁ、ここの道場、貸してよ。あるでしょ、一応」  二人から正反対の事を言われ、どちらに反応したら良いものかと、シェイカーも迷っているようだった。  だが、ニュアンスからして、恐らくどちらもすぐに帰る気はなさそうだと判断すると、取り敢えずオフィーリアに視線を向けた。 「えぇと。案内、して良いの?」 「()えで。今度はこの馬鹿猫にお灸据えたるさかい」  その言葉を機に、全員が署内にある試合用の道場へと移動したのだったーー。
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