呪縛

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◇  翌日には、助けてもらったお礼と、犯人だと疑った謝罪を改めて行おうと、蛇石先生に会った。  私たちが助けた女性について、蛇石先生が初めて説明してくれた。 「彼女とは、同じ小学校に赴任した縁で付き合ったが、実は遠い親戚だったと分かって別れることになったんだ」  そのことを悲嘆して何度も自殺未遂を繰り返し、とうとう取り返しのつかないこととなったそうだ。 「まだ若くて君たちみたいに明るい将来があったのに、僕のせいで終わらせてしまって、本当に悪いことをしたとずっと思い悩んでいた。そのせいで、クラスの問題にまで気が回らなかった。言い訳じみてしまうし、遅きに失しただろうが、苛めを見過ごしていた十輪さんには、心から謝りたい」  都鶴に向かって、蛇石先生は深く頭を下げた。 「馬園倉重さんが行方不明になって、僕は責任を問われて精神的に追い詰められていた。事件を蒸し返されるのが嫌で、名前や顔を見聞きすることも避けて、このまま忘れてしまいたいと思ってしまった。教師失格だとまた自分を責めて、逃げ場のない苦しさとやりきれなさから、まともに児童たちと向き合うことが出来なくなっていた」 「いいえ、いいんです」  蛇石先生も苦しんでいたのだと理解した都鶴は、とてもスッキリした顔になっている。過去のわだかまりを捨て、これからは前を向いて生きていけるだろう。  都鶴が突如宣言する。 「私、進学する! 東京の大学を第一志望にする!」  引きこもっていた彼女にとっては、これはとても大きな前進である。 「同じ大学においでよ」 「うん。行きたい!」  いつか東京にやってきた都鶴を、とことん案内してあげよう。転校生として村にやってきて、右も左も分からなかった私に村のことをたくさん教えてくれたように。  都鶴と再会することを約束して、私は真賀月村を後にした。  真賀月村バスターミナルまで見送りに来てくれた都鶴と蛇石先生は、私の乗る高速バスに向かって、いつまでも、いつまでも、手を振ってくれた。  終わり。
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