動物幼稚園の運動会

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 ここは動物幼稚園。  ゾウやキリン、イヌにネコにサル、それにウマやウサギなどの子供たちが通っています。  フクロウの園長先生が教室に入ってきました。 「みなさん、おはようございますホーホー」  ゾウの子供が、 「おはようございますパオーン」  イヌの子供が、 「おはようございますワン」  ネコの子供が、 「おはようございますニャー」  ウマの子供が、 「おはようございますヒヒーン」  みんな口々にあいさつをします。  おや?園長先生からお知らせがあるようですよ。 「みんな、今日から新しいお友だちが入ったよ。人間の子供だホーホー」  園長先生の後ろから、恥ずかしそうに小さな人間の子供があらわれました。  ザワザワザワザワ。  みんなきょうみしんしん。 「うわあ、人間の子供だパオーン」 「人間の子供を見るのは初めてだワン」 「人間だニャー」 「人間の子供だヒヒーン」  今日はうんどうかいの日です。  動物幼稚園の子供はみんなうんどうかいが大好きなので、みんな張り切っています。  さあ、かけっこが始まりますよ。  ヨーイドン! 「やったー!いちばんだヒヒーン」  いっとうしょうはウマの子供です。  ほかのみんなも、あっという間にゴールしました。  あれ?まだ走っている子供がいますよ。  人間の子供ですね。 「人間の子供は足がおそいワン」 「人間は足がおそいニャー」  ビリは人間の子供でした。  次は木のぼりきょうそうです。  ヨーイドン! 「やったー!いちばんだウッキー」  あっという間にサルの子供がてっぺんまで登りました。  リスの子供がそれにつづき、ネコやネズミの子供もスイスイと登ります。  おや?登れない子供がいますよ。  人間の子供ですね。 「人間の子供は木のぼりが下手だなぁウッキー」  次は大玉はこびです。  大きくて重い大玉をエッホエッホとはこばなくてはいけません。  ヨーイドン!  ゾウの子供が軽々とはこびます。  ライオンの子供も軽々とはこびます。  サイの子供もお茶の子サイサイ。  おや?  はこべない子供がいますよ。  人間の子供ですね。 「パオーン。人間の子供は力がないなあ」  さあ、みんなお楽しみお昼ごはんの時間です。 「おなかペコペコだパオ」  大玉はこびで大活躍したゾウの子供がガツガツとごはんを食べます。  木のぼりでかつやくしたサルの子供もおなかペコペコ。  バナナを何本も食べています。  かけっこでかつやくしたウマの子供も、ニンジンをいっぱい食べました。  動物幼稚園の子供たちはみんなごはんが大好き。  みんなお昼ごはんをいっぱいいっぱい食べました。  おや?あまりごはんを食べていない子供がいますよ。  人間の子供ですね。  人間の子供もごはんが大好きなのに、どうしたのでしょう?  ごはんを食べたら、本日のメインレース、しょうがいぶつきょうそうです。  このきょうそうは大変ですよ。  なにせ、走るだけじゃなくて、いろんなしょうがいをクリアしなくてはなりません。  それでは、いいですか?  いちについて。  ヨーイドン!  みんないっせいに走りだしました。  おや?  かけっこで一等賞をとった、ウマの子供がおそいですね。  ウマの子供だけではありません。  サルの子供も、イヌの子供も、みんなおそいようです。 「ウッキー。おなかがいっぱいで苦しいなぁ」 「ヒヒーン。ニンジンを食べすぎたよぉ」  みんな、ごはんを食べすぎて走れないようです。  いくら好きなものでも、ほどほどにしておかなくてはいけませんね。  一番先頭を走っているのは、おやまあ、人間の子供です。  人間の子供は、ごはんを食べるのをほどほどにしておいたから、走れるのですね。 「ごはんを食べすぎたワン。人間の子供のように、ほどほどにするべきだったワン」  さあ、一つ目の障害が近づいてきましたよ。  なんと、さっきの大玉が道を塞いでいます。  通るには、大玉をどかさなくてはいけません。  力もちのゾウやライオンの子供は、軽々とどかしましたが、力のないネコやネズミの子供は、困っています。 「チューチュー。困ったチュー。ぼくの力じゃどかせないチュー」  そこに人間の子供がやってきました。 「ネコさん、ネズミさん。みんなで力を合わせましょう。そうすれば、この大玉をどかすことができますよ」  みんなは人間の子供といっしょに力を合わせて大玉をどかしました。 「みんなで力を合わせればよかっただなんて、知らなかったニャー。人間の子供は賢いニャー」  みんなで協力して大玉をどかすことができたので、動物たちは走っていきます。  あっ!だれかが転びました。  ウサギの子供です。  調子よく先頭を走っていたのに、残念。  みんなに抜かれてしまい、あっという間にビリになってしまいました。 「クークー。転んでケガをしちゃったよぉ。もう走れないよぉ」  おや?人間の子供が戻ってきましたよ。 「ウサギさん。ぼくがおぶっていってあげるよ。ぼくといっしょにゴールしようよ」  人間の子供はウサギを背負って走っていきました。 「クークー。人間の子供は優しいクー」  レースはどうなったでしょう?  おやおや?みんなゴール手前で立ち止まっていますね。  ゴールの前には、大きな池があります。  この池を飛び越えなければ、ゴールにはたどり着きません。  でも、みんな怖がっていて、誰も池を飛び越えようとする動物がいないようです。 「ブルブル。こんな大きな池を飛び越えるのは怖いワン。池に落っこちるワン」 「パオーン。池に落ちてぬれちゃうよぉ」  みんな池に落ちるのが怖くて、足がすくんでいます。 「よおし。ぼくが飛び越えるよ」  そう言ったのは人間の子供です。  ウサギを背負ったまま、助走をつけると、エイッとジャンプしました。 「うわぁ!すごぉい」  それを見ていた動物たちから歓声が起こりました。 「人間の子供は勇気があるなぁ。よおし、ぼくだって」  人間の子供に勇気づけられた動物たちは、みんないっせいに飛び越えました。 「やったぁ!飛べたぞぉ!」 「わーい。わーい。飛べたぁ!」  さあ、ゴールは目の前。  みんな同時にゴールしました。  フクロウの園長先生がニコニコ顔でみんなを出迎えます。 「ホーホー。みんなよく頑張ったね」 「ヒヒーン。人間の子供はウマより足がおそいよ」  ウマの子供が言いました。 「でも、ほどほどにすることを知っているワン」  イヌの子供が言いました。 「ウッキー。人間の子供はサルより木のぼりが下手だよ」  サルの子供が言いました。 「でも、賢いチュー」  ネズミの子供が言いました。 「パオーン。人間の子供はゾウより力がないよ」  ゾウの子供が言いました。 「でも、優しいクー」  ウサギの子供が言いました。  それから、みんなは声を合わせて言いました。 「人間の子供は勇気があるよ」  それを聞いて、フクロウの園長先生は言いました。 「ホーホー。みんな。誰一人として完璧ではないよ。でも、みんないいところを持っているんだよ。だから、みんなのいいところを認め合おうね。そうすれば、もっともっと楽しい幼稚園になるよ」 「はーい」  みんなは声を合わせて返事をしました。  そして、「今日は楽しかったなぁ」と口々に言って帰っていきました。  きっと明日も楽しいことでしょう。
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