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霧生兄弟は、二年の五月から、この、緑川高校に転入してきた。そして、双子の弟である霧生源士くんと、一緒のクラスになった。兄である総司くんは、源士くんとは違って、黒髪の貴公子といった印象。銀縁眼鏡に萌え萌えする女子があまたいる。
一方で、同じクラスの霧生くんのほうは、茶髪で、いつも、ヘアワックスできちんと髪をセットしていて可愛らしい好青年ではある。……あれで、イタくなければね……。ふたりとも、東京から引っ越してきたって聞いてるけれど、標準語を喋る霧生(兄)くんに比べ、霧生(弟)くんは、瞬く間に緑川の方言をマスターした。話し方も相まってか、フランクな印象だ。
そしていつも通りわたしは部室に向かうとトランペットを吹き。合奏を終えると帰宅する。帰る途中、ふと――霧生(弟)くんの発言が思い出された。
マヨパンが売り切れ。……で、明日は、この道を通るな? だっけ?
ばっかばかし。だいたいわたしには……。
後ろをついてくる黒い影にわたしは話しかける。「どうしたん? 今日は、なんか、歩くの遅ない?」
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