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クラスメイトの目を気にしてわたしは声量を落としたのだが。霧生くんは思いのほか、シリアスな顔で、
「……憑いてる、でしょう?」
ぞわっ、……と、背筋が泡立った。なにもかもを見透かすような瞳に。
「分からないとでも思っている?」真顔を崩さない霧生くん。普段はへらへらしてばっかなのに。「それね。どうにかしとかないと……悪霊って悪い霊をどんどん引き寄せる性質を持つからね……類は友を呼ぶ。いまのうちに消去しとかないと、……危ない目に遭ってからだと遅いんだよ」
「――霧生くんになにが分かるのッ!!」
わたしの声に、クラス中の視線が集まった。それを感じながらもわたしは、……
「……大切な存在なの。今更……離れられるわけないやろが」
言い捨てて教室を出た。
* * *
影が、わたしに、ついてくる。冷たい雨が、降り注ぐ。傘も持たないわたしたちに。『……実奈帆ちゃん。大丈夫?』
「平気」とわたしは制服の袖で涙を拭った。「言いたい人には勝手に言わせておけばええわ。わたしは、……わたしには、けいくんがおるさけ……わたしにはけいくんだけなげよ。信じて……」
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