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「――なら。解放してやりなよ」
驚いた。影をそっと――背後から抱きしめていたのは、霧生源士くん。「実奈帆には実奈帆の人生がある……。きみがいることで、実奈帆に災いが降りかかっていまもこんな危ない目に遭っている……それで、きみは、いいの?」
影が、ぽろ、ぽろ、と涙を流した。『違う……違う違うおれは……ッ』
「――けいくん」わたしも。そっと影を抱きしめた。「ごめん……束縛していたのはわたしのほうだったね……けいくん。
けいくんは、もう、自由になって。自由になって、いいんやよ。
いままで……ありがとう」
『――実奈帆ちゃん』影が、ゆらめき、天へとのぼっていく。影がわたしを見て笑った。『ぼくのほうこそ……、ありがとう……ぼくは、実奈帆ちゃんと一緒にいられて幸せ……だったよ。幸せになってね……実奈帆ちゃん』
すぅ、と影が空中へと溶けて――消えた。ふぅ、とからだを起こす霧生総司くんの頬には血が滲んでおり、霧生源士くんの手は真っ赤だった。わたしの視線に気づくと霧生源士くんは笑った。
「――あ。これ? 数日で治るから気にしないで? 神様にだって出来ないことはあるんだよ?」
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