スカルラティ

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  スカルラティ 「それ、なぁに?」 「ラード」 「ラード?なに?」 「つかってみたかったんだ」 椅子にスカルラティは座っている。両足を椅子にのせ、両腕でかかえる。 ジイのしぐさをつぶさにみている。 「ワセリンでもいいんだろうけど、ラード、いっかいつかってみたかったんだ」 「ラードってなんですか」 「あぶら。豚のあぶら」 ジイはわらう。 …キモ。 スカルラティはおもう。 「さぁて、きょうは」 「ベッドですか」 「いや、きょうはここに立って」 スカルラティはネイヴィのトレンチコートにブラとパンツをはいたまま椅子からおりた。 「さぁ、ここで、椅子にこうして手をかけて」 ジイはポーズをとる。 「こうしてさ、おしりをつきだして」 スカルラティの腕をつかみしむける。 「こうですか」 「もっとおしりをつきだしてさ」 ジイはポーズをつくる。 いちだんと腰をつきだした。 「こうですか」 「そうそう」 真白な下着はジイがかいあたえた。 ジイがスカルラティのうしろからコートにもぐりこんでくる。 「もっと、股ひらいて」 パンツにさわると、 「ちょっと、暗いな。」 椅子を窓際にもっていく。 「おてんとうさまにスカのカントみせてやろか」 中指のラードをスカルラティの肛門にぬる。 スカルラティはちいさな息をたてる。 ジイはいそがない。 妻にはしたことがない。 なかへいれようとするが、手をとめる。 左手はスカルラティの耳のあなをなでてゆく。 スカルラティの息があらくなる。 「声にだしちゃだめ」 ジイは人差指と薬指をからませる。 ジイの指先にスカルラティの皺を感じる。 スカルラティは腰がくだける。 「だめ、もいちど」 スカルラティは椅子にあたまをあずける。 ジイはスカルラティの両足をぴんとのばす。 コートはスカルラティの右肩による。 それをジイは再度かけなおす。 コートのすそをめくる。 スカルラティの陰部がひかる。 それでもジイはラードをうすくうすくぬっていく。 スカルラティの息がこぼれる。 「だめだよ、我慢しなくっちゃ」 「がまんできません」 ちいさなかわいい声だ。 スカルラティの左手をジイの陰茎にふれさせる。 そしてスカルラティの口にふくませる。 ジイの手はやすまらない。 陰茎は怒張する。 ジイは腰をゆっくり動かす。 かのじょののどのおくへはけっしていれない。 わざとはずして鼻へこすりつける。 スカルラティのつばでぬりたくられた陰茎をかがせるのだ。 「すきなにおいだろ」 スカルラティの腰つきはジイの指をほしがるようだ。 スカルラティのこうべははげしくなる。 まえへうしろへ。 左手はジイの腕をつよくはなさない。 「ごほうびだよ」 ジイはそういうと、 「舌をだして」 陰茎をスカルラティの口からぬきだす。 いきおいよく鼻先にとんだ。 そしてつぎはスカルラティの舌へ2度、3度、4度とび、やがてしたたりおちる。 「きれいにね」 ジイは自身の陰茎をスカルラティの鼻先にあて、とびちった白濁をくちもとにはこぶ。 「のこさずだよ」 ネットで監督が女優にてをつけた。 かまびすしい。 新進女優は、 バカじゃん。 こころのなかでつぶやいた。 じゃぁ、どうしたら稼げるようになれるのさ。 わたしのようなぶさいくが。 有名になるための近道ってあるの? ひとつひとつ階段をのぼっていく。 みんないうけど、 階段なんてどこにあるの。 そんなのない。 嘘。 チャンスなんて待ってたってこない。 カタログ雑誌の撮影で仕事先への途中、 新進女優は女性誌の記者につかまる。 楽能さん、ちょっといいですか、観心監督の被害をうけたんじゃないかって、ホントウのところは、どうなんですか。 新進女優はたちどまる。 監督と女優です。それだけです。 小さな声で毅然とこたえた。 それでは、 ちいさく会釈をした。 タクシーにのりこんだ。 監督のはにがいけど。 バッカじゃないの。 死ね。 糞野郎ども。 その日、2時はすぎた。 タクシー乗務員は弁当をひろげ、スポーツ報知をひろげる。 芸能欄には、いまのせたばかりの人気女優の写真がのっていた。 乗務員はきいていた。 監督のはにがいけど、 バッカじゃないの。 死ね。 糞野郎ども。   観心というおとこ 性暴力について、被害者のことは語れない。 やられたことないし、そんなことしらないし、そんなめにあったことないから。 けれど、そんなことしたって、べつに、ヘリもしないし、っておもってるひといるわけだし。 けっこういるとおもう。 それで、よろこぶんだから、いいんじゃないかな。 仕事もらうのってありがたいわけだし。 いいか、わるいかってことじゃなくて、じぶんのことかんがえてみても、 学歴とかあるわけじゃないし。 どこのウマのほねかって、わからないわけだし。 きれいじゃないし。 ぶさいくだし。 なんにもない。 劣等感のかたまりで。 むねはおおきいのかもしれない。 ふつうよりかは、ね。 パークサイドホテル352。 鏡をまえにスカルラティはひとりでしゃべる。 ちいさな、かわいい声だ。 シャワーをあびて、ぬれた髪をタオルでぬぐう。 まちあわせは14時。 青いフレームはかのじょの印象をビジネスパースンにかえる。 白いシャツ、ネイヴィのトレンチは愛用である。 下着は白。 その日も監督からのもらいものを身につける。 ドアのチャイム。 …きた。 スカルラティはゆっくりとドアにむかう。 小窓をたしかめ、帽子のすがたをみとめると、ドアをあける。 ジイはドアがあくまえにファスナーをおろしている。 すでに陰茎は硬直している。 ドアがひらく。 スカルラティは男のうでをとり、部屋へみちびく。 ドアがしまる。 ジイはスカルラティの肩をつかみ、よせる。 「さぁ、スカルラティ」 おとこのほおにくちびるのルージュをべっとりとつける。 舌と舌をからませる。 ふたりのつばきが濃くまじる。 スカルラティは左手で陰茎をにぎる。 ジイはスカルラティの両肩をもつと、ひざまづかせる。 「いくよ」 スカルラティは陰茎の角度をそこなわないように、口にふくむ。 ねもとを両手でおさえ、2度、3度、 ゆっくりとすいこんでみる。 口をすぼめておもいっきりすってみる。 亀頭と襞のむすびめを舌ではわせる。 ジイはこえをもらす。 すると、口の内側に、スポイトでついたような刺激。 1度めより2度めがつよく、3度めとつづく。 スカルラティの口角からこぼれそうになるのを、 スカルラティは人差指で口へもどす。 スカルラティはその場にすわりこむ。 「すごい、いっぱい」 ジイはベッドへたおれこむ。 仕事のはなしはしない。 おりこみずみなのだ。 観心はかれの妻にさせたことがない。 スカルラティにはかれしがいる。 ジイは意に介しない。 それはかれがかれなりのひとづきあいをみつけたからである。 むしろ、愉しむためには、感情は邪魔ですらあるとかんがえていた。 ほしいものはなにか。 それがはっきりしていればいい。 奇妙といえば奇妙ではある。 が、ゆえに、2人の関係は、はたからみるよりも、つよい。 「ばらされてるじゃん」 「えっ?」 「みたよ」 「ああ、あれ」 「ほうっておけばいい」 スカルラティはわらっている。 「いくらで売ったのかな」 「けっこうするんじゃね」 ジイはわらう。 「監督だったら、いくらはらいます?」 「50万」 「そんなものですか」 「これから値あがるさ」 スカルラティは紺色のコートをきたまま、パンツをぬぐ。 「ぐーんと」 「ぐーんと、ですか」 コートをぬぐと、ジイのベッドへもぐりこむ。 ジイの下半身をまさぐるように、まるで猫がじゃれるようにおどけてみせる。 ふたりは泥のように寝る。 スカルラティはおやおもいかもしれない。 しょちゅうLineでママにおくる。 これからの予定、撮影のようす、なにをたべたか。 写真をつけておくる。 ママにはそれがなによりのプレゼントだ。 文字を書くのがにがてなママは、Lineで直接スカルラティとはなす。 かならずスカルラティが部屋にいるときである。 スカルラティがママへ、 もどったよ、 ウチについた、 いまかえりました、 とつたえるからである。 「スカおいで」 ジイはおいでおいでとおおげさだ。 「なぁに」 スカルラティは、かわいい、ちいさな声でこたえる。 「はずかしいかもな」 椅子にタオルケットを2枚しく。 「さぁ、ここでくばぁとひらくんだよ」 「なんですか」 「くぱぁ、さ」 「くぱ、なんですか」 「ここえ、こうして、ひろげるんだ」 ジイは椅子にすわる。 両手をひろげる。 「すこしいじわるしようか」 スカルラティはベッドに両足をかかえてすわったままだ。 「いじわるはいやですよぉ」 ちいさな、あまい声でいう。 「さぁ、ここにすわって」 ジイはたちあがり、タオルケットを座面によせる。 「下着はつけて、さ」 スカルラティはいわれるまま、かれにしたがう。 スカルラティは椅子のまえにたつ。 するとハンドタオルでちいさな顔をぐるり、 めをかくされる。 肩をつかまれて、椅子にすわらされる。 「手をうしろでくんでごらん」 すかさず布テープでリストあたりをぐるぐるとまく。 スカルラティは肩の関節がかたく、椅子のせもたれに上腕の内側があたる。 「いたい」 ちいさな声だ。 「あしをここにのせて」 ジイはかたほうづつ、ひじかけにのせる。 「どう、くるしいかな」 「うでが、いたいです」 「ここは」というと、あしをなでながら、 「いたくないでしょ」 といった。 「やさしくしてください」 スカルラティはいう。 ちいさい声でいう。 「スカはかわいいからさ、いじわるしたくなるんだな」 ジイはスカルラティの陰部にかおをちかづける。 「シャワーはまだだっけ」 「朝、はいりました、きてからも」 「なんのにおいかな」 「へんなにおいしますか?」 「ああ、だめだ」 ジイはティシュを5枚まるめると、 「これからはシャワーなしでさ」 スカルラティにかませる。 「いいにくいかもしんないけど、声は出すんだよ」 そういって、かのじょの陰部をまさぐりはじめる。 「へへへへへ」 かすれたような、きみょうなテンポの声でいう。 ジイにはききとれる。 「しゃべれません」 といっているのだ。 その声はかわいい。
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