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暗い。夜になれば田舎は街灯の明かりに頼ることもできずに、暗闇の中を歩かなければならない。
その中で武多吉見(たけだ よしみ)は無心で足を動かすだけだ。
月は雲に隠れて、住宅街の窓からわずかな明かりがあるだけだ。
故に完璧な闇でない。蝋燭の頼りない光に古人は想像力をかき立てたように、完全の闇ではなくとも、少しの明かりでも人に想像力を与える。
寒さに震えた吉見は自動販売機の前に止まった。
白い明かりは吉見の顔を照らし、古い型のコートの灰色を映し出す。慣れた様子で吉見は黒い小銭入れから百五十円を取り出して入れる。
あたたかいと書かれた珈琲のボタンを押す前にふと吉見は手を止めた。
吉見はじっと見つめていた。吉見の目にはある一点に注がれていた。
『幸福のお茶』
そんな胡散臭いお茶に吉見は見ていた。お茶のパッケージは金色の缶。緑色の文字が明朝体で書いている。表面はラメでキラキラと光っているように見える。それをぼんやりと見ていた吉見は迷わずその怪しげなお茶のボタンを押した。
住宅街にガランと缶が落ちる音が響いた。ぼんやりとそれを見ていた吉見は我に返った。
自動販売機から取り出すと『幸福のお茶』は自動販売機の明かりでキラキラと光っている。
「マジかよ」
吉見は自分にあきれていた。そして、ため息をつくと熱い缶のプルトップを引いた。お茶はなんともないものだ。緑茶のようだ。中国茶かと思っていたが、違うようだ。
温かいお茶は体をぽかぽかとしていく。缶を飲みきった吉見は自動販売機の横にあるゴミ箱に缶を捨てた。
そして吉見に目には見えないものを映す。道の真ん中に女がいた。膨らんだ胸もないのに吉見には女に見えた。
裸だ。
長い髪がゆっくり風に乗った。サラサラという音が聞こえそうである。闇の中黒い髪から美しい面が見えた。
吉見は見とれていた自分に気がついてぎょっとした。女が裸足でアスファルトをゆっくりと歩む。近づいてくるのかと吉見は思った。
気がつけば、女、違う青年は吉見の前に立っていた。近くにくれば、女とは違う喉仏があることに気がついた。しかし妙に体がまろみを帯びている。
「僕を抱いて」
青年がつぶやいた。
青年の白い肌が蛍光灯に反射して、寒々しいはずだが、白い無機質だけではない陶磁器が持つ艶やかさを思わせるものだ。少年は裸足である。
青年に吉見のコートを着せて、お姫様だっこをして運んだ。青年は軽かった。
まつげを伏せたまま、部屋につくと暖房をつける。部屋が暖かくなると甘い香りがする。バニラの香りに似ている。それが少年から漂う。
青年をベッドに横たえる。すっと青年が目を開ける。不思議な色をした目。ただの黒い瞳ではない、いろんな色を混ぜたように深い色をしている。
吉見は奇妙な興奮を覚えていた。白い花びらをちぎるような、幼子のような気持ちがある。それを俯瞰しているように見ている自分がまたいる。
青年はコートを脱いだ。そしてゆっくりと近づいていく。青年の切れ目がうっすらと潤み、女と見違えるような赤い唇は薄く開いた。
「怖い?」
「怖くないよ」
吉見はそれを言ったとたん青年の唇をむしゃぶりついた。柔らかく、唾液の暖かさを知る。口の中を吉見の舌がなぞっていく。服を脱ぐのも億劫だ。
青年の舌と絡み合い。まるで溶け合っていくようにお互いの舌を追いかける。青年の目、黒い瞳とかち合う。吉見の体は本気になった。この青年を自分のもので刻みたい。自分のものにしたい。
息が切れ、慌てたように吉見はスーツを脱いでいく。青年の熱い視線が吉見の体をなでていく。胸から足、そして男の象徴を。青年がうっとりとした目でほうと息を吐き出した。
裸になった吉見は青年の乳首を触る。青年は悩ましげにくねる。そして横目をちらりと吉見を捕られた。
吉見は母が恋しい子供のように、薄い色素のそれを口に含む。小さなそれはしゃぶるにはちょうどいい。甘噛みしながら、なめていく。
グチュリと青年の股から何か出てきた。吉見は自然と乳首を甘噛みすることで青年の分身を刺激していく。
青年の髪が波打った。あっと切なげな声が聞こえた。青年はいきなり、しゃべった。
「もう柔らかいから触って」
「どこを」
吉見が顔を上げる。悠然とした少年の笑みが広がっている。それはゾッとするほど鋭利で美しい。
唾を飲み込む吉見の片手を、青年の手は性器の更に下を探り当てさせる。何もないはずの部分を触るはずが、柔らかい湿ったものが吉見の指を刺激する。
「優しくして」
吉見のものは萎えることがなかったから、不思議なことだ。
指が青年のありえない部分を、女性の部分を刺激する。
蜜が出ている。舌で刺激してやれば甘い声と蜜が更に漏れていく。吉見は興奮している。吉見のものは完全に立ち上がっている。
丹念に指で刺激してやる。処女の初めてを奪うような気持ちに吉見はなっていた。
水の音が聞こえる。彼の男の部分を彼自身がいじっているからだ。
「出した方がいいんだ」
まるで手になれている。チクリと吉見は胸を痛める。柔らかくなったそれに吉見は自分のものを標準に合わせた。
「そんなものは必要ない」
中は柔らかい。コンドームをすべきだと思ったが一瞬のことだった。包み込むように暖かい、しっとりとしている。青年は甘い声でないて、自身から白いものを吐き出した。
自分のものがここにあるべきだと思った。更に奥にすすめばなじんだものがある。青年の顔が目の前にある。青年がしがみつくように吉見を抱きしめる。
「怖いな」
青年がつぶやいた。キスをする。動きたくてたまらない。それを無理やり吉見は抑えていた。
「いいよ。動いて」
胸も柔らかい、青年の体はどこか丸み帯びて艶めかしい。
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