●出勤

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「嘘でしょ! あの人凄い優しそうな人だったじゃないですか! それなのに、半グレとか信じられない!」 「アンタ、本当に何にも知らないんだね」 早希は呆れた様子を見せながら、何も知らない美月に対して説明をしていった。 この界隈は「アーサーグループ」と呼ばれる半グレのグループがあり、「ゼッツ」と呼ばれた先程の男はそのトップに君臨している。 グループの人数は、おおよそではあるが500人以上。 この辺りをうろついている、キャッチ。 そして、乱立しているガールズバー、立ち飲み屋、ホストクラブは、その概ねが「アーサーグループ」の息がかかっており、「ゼッツ」と呼ばれる男はその上がりで巨額の金銭を得ている、との事だった。 「そういうマトモな商売だけじゃなく、ぼったくりバーとかオレオレ詐欺とかも、『アーサーグループ』が関わってるって話だよ。 あと、違法なドラッグとか……」 神妙な面持ちで語る、早希。 が、それを聞く美月は興奮しきっており、何度も固唾を飲み込んだ。 「じゃあ、ゼッツって人は、いつ捕まってもおかしくない、って事ですか?」 早希の話が落ち着きを見せると、美月は何故か目を輝かせながら尋ねる。 「どうだろうねぇ。 あくまで噂でしかないし、ってかそういうので捕まらないようにしてるから、ゼッツ君は『半グレのトップ』としていられんじゃないの?」 早希が答えると、美月は「そうなんだぁ」と大きく頷き、夢想に浸ってしまったのか、しばらく虚空を見つめ続けた。
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