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「アンタ、何か楽しそうだね」
「えー、だって不良の人って大抵カッコイイじゃないですか。
で、さっきのゼッツさんとかまさにそれで、モロにカッコ良かったし、それでいて優しそうな雰囲気だったから、もうアタシ的に超タイプで!」
「アンタがゼッツ君に対してどんな想像を巡らせるかは自由だけど、想像だけにしておく方がいいよ」
早希は肩をすくめた。
「実際、この辺でトラブルがあったら、まず動くのは、ゼッツ君率いる『アーサーグループ』だから。
ゼッツ君の指示かどうかはともかく、『アーサーグループ』の人達が誰かをリンチしてる、なんてのは日常茶飯事だしね。
ヤクザですら、今は法律で自由に動けないから、ゼッツ君の『アーサーグループ』に何かしら頼んでるくらいなんだよ。
でさ、あくまで聞いただけの話だけど、ゼッツ君と揉めた人の何人かは、行方が分からなくなってるらしいのよ。
どこまでホントかは知らないけど、揉めた人は殺されたとか国外逃亡したとか、変な話ばっかり聞くし。
一応、忠告しておくけど、カッコイイだけの不良とか漫画だけの話だから、あんまり深追いしちゃダメ。
変に関わったら、アンタが痛い目見るだけなんだからね」
「はぁい」
美月は頷くが、その返事が場当たり的な返事だというのは、聞く人間の誰もが分かった。
その時、顔を赤らめたサラリーマンが立ち止まり、美月の隣にいる早希にじっとりとした視線を注ぐ。
客だと判断した早希は、視線を美月からサラリーマンにすぐさま移すと「ヌキだけなら5000円!」と、作り笑顔を浮かばせながら言った。
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