魔法使い、始めました!

3/5
前へ
/5ページ
次へ
私は考えます。駆け出しとはいえ勇者は時代に一人、この機会を逃せば二度と会うこともなくなるでしょう。この男性についていけば、血沸き肉躍る冒険が待っていることは間違いありません。その分危険もあるわけですが、魔法使いという職業を選んだ以上、危険は覚悟の上でした。 私自身、仲間を探しにこの店にやってきました、しかも職業勇者が話かけてきたのです。普通の冒険者なら史上最大のチャンスが、この初日に巡ってきたのです。 私の意志は、男性が隣に座った時から決まっていました。 私は差し出された手を……叩きました。 男性は驚いた顔を見せます。視界の端にちらつく他のお客さんも、なんだか驚いているようです。 「ど、どうしてだい?勇者の僕が誘っているんだよ?」 あまり分かっていない様子で、男性は問いかけてきました。なので、私はきちんとご説明しなければいけないと思いました。 少々長くなる説明をするために、私は一度咳払いをしました。 「貴方、勇者だかなんだか知りませんが、まずはその上から目線の態度をやめた方がいいですよ?正直その偉そうな態度が気に入りませんでした。貴方との冒険を想像して、この先もその態度を貫かれることを考えたら憂鬱で仕方がありませんでした。ただでさえ冒険は肉体的に大変だというのに、一緒にいて精神的にも苦痛だと私にはとても耐えられそうにもありません。せめてその傲慢な態度を改めて出直してきてください。これが第一の理由です」 「だ、第一……?」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加