魔法使い、始めました!

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「第二に、私は魔王を討伐する気がありません。魔王を討伐してしまったら魔物がいなくなってしまいます。貴方はそんな世界を想像したことがありますか?……頷いているようですがその顔は何も考えていない顔ですね。いいですか、考えてもみてください。魔物が全ていなくなってしまったら私たちの仕事はどうなるのですか?当然戦う相手がいなければ私たちはやることがありません、貴方はお皿洗いのアルバイトでも始めるつもりですか?私はお皿洗いはもううんざりなのです、手は荒れるしお給料は安いですし。私はただ魔法使いとして楽にお金を稼いでのんびり生きていきたいだけなのです。私は私と志を共に仲間を探しているだけで、魔王を討伐しようとする貴方と仲間になる気はありません。そもそも敵の敵は味方、という理論で言えば貴方は私の敵になるわけですから」 「て、敵?勇者である……僕が?」 何やら動揺していますが、私は全部言い終えていません。再び口を開こうとしましたが、男性が無理やり割り込んできました。 「ちょ、ちょっと待って!」 「いいえ、待ちません。だいたい人が話しているのに遮るのはどうなのでしょうか。そういったところが態度に出ているということがどうして分からないのですか。人の話は最後まで聞くのが常識じゃないのでしょうか。勇者以前に人として未熟なことを自覚した方がいいですよ?」 そう言うと男性は少し背中を丸くして椅子に座り直しました。どうやら私の話したことが少しは伝わったようです。とは言っても、私が断りする理由はあと一つしかありませんが。 「最後の理由ですが……私はミルクを二杯も飲めません」 「……え?」 「私をミルク一杯で懐柔しようとしたようですが、たった今無理やり飲み切ったミルクを私が再び飲み干せるとでも思ったのですか?嫌がらせですか?こういうのは良い雰囲気のバーで高いカクテルをご馳走してくれるのが素敵なのであってお昼からこんなごちゃごちゃした店でしかもミルクを奢られてもちっともときめきません。例えお酒を渡されたとしても私未成年ですし、それはそれで貴方の常識を疑っていましたけどね。人として魅力がない上に男性としても魅力がないのはもう終わっていますね。そんな方にどうやったらついていくという選択ができるのでしょうか?私の立場になって考えた時に貴方にはできますか?できないですよね?まずは貴方ご自身を見つめ直してちゃんと考えてから人を誘った方がいいですよ。……あぁ、ごめんなさい。貴方がない頭必死になって考えたのがこのミルクだったんでしたね。それでしたら何十年掛かっても私が貴方の仲間になることはありません。来世にでもまた出直してきてください」
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