1486人が本棚に入れています
本棚に追加
目の前に幾つもの光がフラッシュする。
血液が逆流して一瞬くらりと眩暈がした。
だがそれは全く不愉快なものではなく、これから始まる幸せへのファンファーレのようだった。
それらが治まってくると、入れ替わるように多幸感というのか、全てに満ち溢れた高揚感に包まれ、暫しぼおっとしていた。
そうだ、祐也!!祐也は!?
慌てて顔を覗き込むと、祐也は全身を赤く染め大きく目を見開き、ぷるぷるとその身を震わせて、はふはふと忙しない呼吸をしていた。
目の焦点は、合っていない。
「…あ…はっ…あ…」
何か言おうとしているようだが、言葉にならない。
吐息のような甘い声を発するだけだ。
「祐也、大丈夫か?」
声で俺のことを認識したのか、深い息をひとつ吐いて、安心したような顔をしてゆっくりと目を閉じてしまった。
「祐也っ!?」
揺り動かして起こそうとしたが気を失ったようで、祐也はそのまま軽い寝息を立てて眠りに落ちた。
大丈夫そうだ。
大きく息を吐いて、頸につけた俺の噛み跡を確認する。
くっきりとついた歯型は皮膚を抉り、血が滲んでいた。
「こんなに酷くするつもりなんてなかったのに。」
ぼそりとひとり言が口をついて出た。
手当てしてやらなきゃ。
俺は祐也をベッドに横たえると、救急箱を取りに走り、ガーゼ等を整える。
「少し滲みるかも。ごめんな。」
ガーゼを湿らせていくと、ツンとした消毒液の臭いが鼻につく。
俺達のフェロモンが掻き消されてしまった。
残念に思いながら傷跡をそっと拭き取ると、痛かったのか祐也が「うっ」とひと言呻いて身を捩った。
「ごめんごめん、少しだけ我慢して。」
痛くないように注意しながら手当てを終えると、ぺたりと貼り付けた絆創膏のせいで、番の印が隠れてしまった。
でも。
これでもう俺達は、誰が何と言おうと正真正銘の番となったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!